「障害ある子の介護に疲れた」長男殺害疑い逮捕の母、容疑認める~コロナ禍で急増する「介護殺人」~

アニスピわおんそのほか

障害のある子どもの介護に疲れからの無理心中や殺人が後を絶たない。

 

「障害ある子の介護に疲れた」 長男殺害疑い逮捕の母、容疑認める

https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/310484

 

京都府警下鴨署は2020年7月17日夜、殺人の疑いで坂山文野(ふみの)容疑者(52)を逮捕した。

 

同署によると、

 

「障害のある子どもの介護に疲れた。数年前から、物を投げたりして暴れるようになった」

 

と容疑を認めているという。長男のりゅうさんには知的障害があったといわれている。

 

「介護殺人」とされる事件数は、1998年から2015年までの18年間で716件あるが、特にコロナ禍において、その件数は増加している。

 

特に女性が加害者のケースが増えている。

 

女性は介護や育児の悩みを他者と話すことで、解消しているケースも多い。

 

他者との交流がしづらく、悩みを共有する機会を失い、将来への経済的な不安を抱えている人は増えている。

 

長引くコロナ禍の影響が顕在化してきていると感じる。

 

筆者は同じ障害児を抱える母親として、非常に同情的だ。

 

りゅうさんは市内の支援高等学校に通っていた。

 

筆者の子は軽度発達障害で、小学校の特別支援学級に通っている。

 

筆者も育てにくい障害児の育児に悩み、うつを患ったこともあれば、なかなか眠りにつけないこともある。

 

障害児の育児に関する悩みは他人になかなか話しにくいのだ。

 

同じ障害児の母であっても、軽度・中程度・重度では悩みの質が違う。

 

「隣の芝生は青く見える」

 

というが、軽度の子を持つ親は、重度の子を持つ親のサービスの充実ぶりをうらやみ、重度の子の親はその障害の軽さをうらやむなど、同じ親でも分かり合うことは難しい。

 

さらに、身内の理解が得られるかといえば、容疑者くらいの世代の人であれば、

 

「育て方が悪い」「そんな子を産んだ血が悪い」

 

などと、理解を得られるどころか、逃げ場をなくすような言葉を浴びせられてきた可能性もある。

 

筆者の子はまだ小学生だが、りゅうさんは高校生。

 

思春期である。障害あるなしに限らず、思春期特有の問題も出てくる。

 

物を投げる・暴れる状態の息子に疲れ果ててしまった気持ちは容易に想像できる。

 

障害児育児を取り巻く福祉サービスやサポート体制は、市区町村・個人により格差が大きい。

 

筆者が住む自治体では、特例が出やすく、月1週間のショートステイサービス(有料)が認められている。

 

だが、その金銭的負担も決して小さくなく、シングル家庭の我が家には大きい金額だ。

 

また知人は地方都市に在住しており、やはり知的障害児を抱えたシングル家庭だが、そもそもショートステイのサービス自体が存在しない、ヘルパーを確保できないなど、彼女の日々の負担も非常に大きい。

 

介護殺人は高齢化社会の日本においてますます増加していくだろう。

 

そして、高齢となった親が、障害を持った子の介護に、体力的に追い付かず、手にかけてしまうという事件は増加していくだろうと予想される。

 

もちろん筆者は殺人を肯定する立場ではない。

 

そこは法で裁かれる罪だ。

 

しかし、障害児育児を取り巻く現状は非常に厳しく、介護休暇(レスパイトサービス)は充実しているとはいえず、認知度も低い。

 

「レスパイトケア(乳幼児や障害児・者、高齢者などを在宅でケアしている家族を癒すための休暇)の必要性」
https://ai-deal.jp/life-hack/post-2734/

 

こういった悲しい事件を見聞きする都度、介護者に対するケアの必要性の認知とその政策の実施が急務だと感じる。

 

この問題は、筆者が編集長をする「あいである広場(https://ai-deal.jp/)」においても扱っていきたいと思っている。

 

(田口ゆう)