事業主とは?保険、事業主借と事業主貸など法人・個人事業主に役立つ情報

事業をはじめたい方コラム

個人事業主や法人を指す「事業主」。個人事業主になる場合、企業で会社員として働くのとは違う知識が必要になります。

この記事では、事業主の意味、加入義務のある社会保険、従業員の年末調整、個人事業主が帳簿付けの際に使う勘定科目「事業主借」と「事業主貸」の違いなど、事業主のためのお役立ち情報をまとめました。

 

事業主とは

まずは、事業主の意味や肩書き、会社名に関する情報を見ていきましょう。

個人事業主と法人に大別される

事業主は事業を経営する主体を指し、「個人事業主」と「法人」に大別されます。

個人事業主は開業届を提出し、法人を設立せずに個人で事業を営む人法人は法律によって人と同じように権利や義務を認められた組織のことです。

個人事業主は社長を名乗れる?

個人事業主は、「社長」「代表」「店長」「ディレクター」「局長」など、職務上の役割を表す肩書きが使用できます。

ただ、会社に属しているわけではないので、「社長」とすると名刺をもらった相手などに誤解を与えるかもしれません。そのため「代表」を肩書きにするのがおすすめです。

ただし、「代表取締役」や「取締役」は、取締役会を置いている株式会社の経営者しか名乗ることができないので注意しましょう。

法人は会社名、個人事業主は屋号をつけられる

法人の場合、会社と代表者は別の人格として扱われるため、会社名(商号)をつけることが法律で決められています。

個人事業主の場合、事業上の名前をつけたいときは会社名に相当する「屋号」をつけられます。

ただし、「○○会社」「○○Inc.」など、法人に使われる名前は屋号に使えないので注意しましょう。

 

事業主なら知っておくべき社会保険のこと

社会保険

事業主なら知っておくべきことである「社会保険」について説明します。

原則、加入義務のある保険

事業主は従業員の健康や生活を守るために、原則、事業所単位で社会保険に加入することが義務付けられています。

社会保険は以下の5種類です。

  • 健康保険:病気や怪我でかかった医療費の一部を補助する制度
  • 厚生年金保険:老齢給付や障害年金、加入者が亡くなった際の遺族年金を給付する制度
  • 介護保険:介護が必要になった際、介護サービスが提供される制度※満40歳から加入義務があり、健康保険料と一緒に徴収される。
  • 労災保険:通勤中・勤務中の病気や怪我にかかった治療費などを給付する制度
  • 雇用保険:仕事を失ったとき、出産・育児・介護休業の際に給付金を支給する制度

1人で事業を行っている個人事業主やフリーランスは基本的に国民健康保険・国民年金・介護保険への加入となり、雇用保険・労災保険には加入できません

ただし加入条件がある

法人の場合、すべての事業所が社会保険の加入対象です。

一方、個人事業主が従業員を雇っている場合は、以下のような条件に該当する場合、従業員の社会保険への加入が必要です。

  • 従業員が1人以上いる場合:労災保険・雇用保険への加入が必要
  • 従業員が5人以上いる場合:業種によって健康保険・厚生年金への加入が必要

従業員の退職時は脱退手続きが必要

従業員が退職する際には、社会保険の脱退手続きが必要です。

  • 健康保険・厚生年金保険:退職から5日以内に「被保険者資格喪失届」を年金事務所に提出。
  • 雇用保険:退職から10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」を管轄のハローワークに提出。
  • 労災保険:退職時の手続きは必要なし。

 

気になる!従業員の年末調整の手順

事業主として従業員を雇っている場合、源泉徴収した合計額と実際の所得税の総額を調整する「年末調整」を行う必要があります。

従業員の年末調整の手順は大まかに以下の通りです。

申告書を記入・提出してもらう

年末調整には、以下のような書類が必要です。

  • 給与所得者の扶養控除等(異動) 申告書
  • 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
  • 給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書
  • 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書

従業員に該当する部分を記入のうえ提出してもらいましょう。

年調年税額の計算

年調年税額は、従業員に支給した給与に対する所得税を計算するために必要なものです。

提出してもらった書類をもとに、年調年税額の計算をします。

税金の過不足を精算

従業員の給与や賞与から引いていた源泉徴収税額の総額と年調年税額を比較し、税金の過不足を精算します。

年調年税額より源泉徴収税額の総額が多ければ還付、年調年税額より源泉徴収税額の総額が少なければ不足分を徴収します。

年調年税額の計算方法詳細は下記よりご確認ください。

─ 56 ─ 3 年税額の計算 3−1 年末調整の対象となる給与と徴収税額の集計

給与支払報告書を作成

年末調整を行ったら、給与支払報告書(源泉徴収票)を作成しましょう。

給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」と「給与支払報告書」を税務署に提出し、給与支払報告書総括表と給与支払報告書を従業員の所在地となる市区町村へ提出します。

また、事業主は年内12月もしくは1月の給与明細と一緒に従業員本人に給与支払報告書を渡す必要があります。

 

【個人事業主必見】事業主借・事業主貸の違い

確定申告

個人事業主の場合、仕事関連のお金とそれ以外のお金を混同して使いがちですが、帳簿付けは「事業を営んでいる自分」と「プライベートの自分」で分けて記帳する必要があります。

そのために個人事業主が使用すべき「事業主借・事業主貸」について解説します。

事業主借

事業主借」は、プライベート用の金銭を事業に使った場合の勘定科目です。

例えば、事業用の資金が足りなくなってしまったので、プライベートのお金5万円を事業用の銀行口座に振り込んだ場合、以下のように記帳します。

借方 貸方
普通預金 50,000 事業主借 50,000

 

事業主貸

事業主貸」は事業資金をプライベートで使ったことを示す勘定科目です。

例えば、事業用の銀行口座から生活費として10万円を引き出したとき、帳簿の表記は以下のようになります。

借方 貸方
事業主貸 100,000 普通預金 100,000

 

事業主借は収入にならない、経費にならないのは事業主貸

事業主貸や事業主借は事業とプライベートのお金を明確に分けるときに使う勘定科目です。事業に関連のない入金(収入)が事業主借、事業の経費にならない出金が事業主貸となります。

クレジットカード払いの仕訳

クレジットカードを支払いに使った場合、確定申告の種類によって仕訳が異なります。

白色申告と青色申告10万円控除の場合は単式簿記での記帳となるため、クレジットカードを使って購入した日を記入します。

 

例】6月5日にコピー用紙(3,000円)をクレジットカードで購入した場合

借方 貸方
6月5日 消耗品費 3,000円 事業主借 3,000円

青色申告65万円控除の場合は、複式簿記での記帳が必要になります。

法人用クレジットカード(法人カード、ビジネスカード)で支払いをした場合、購入日に「未払金」を計上し、引き落とし日に「普通預金」の勘定科目で未払金を相殺します。

 

例】6月5日にコピー用紙(5,000円)を法人用クレジットカードで購入し、7月27日に引き落とされた場合

借方 貸方
6月5日 消耗品費 5,000円 未払金 5,000円
7月27日 未払金  5,000円 普通預金 5,000円

ただし、個人用クレジットカードで支払いをした場合は、購入日に事業主借を使って記帳すればOKです。

 

例】6月5日にコピー用紙(5,000円)を個人用クレジットカードで購入した場合

借方 貸方
6月5日 消耗品費 5,000円 事業主借 5,000円


青色申告(10万円控除)の必須帳簿

ちなみに、青色申告承認申請書を届出済みで、10万円の青色申告特別控除を受ける場合、以下のような帳簿が必要です。

  • 10万円控除に必要な帳簿

現金出納帳、買掛帳、売掛帳、経費帳、固定資産台帳

65万円控除の場合は、上記の帳簿に加えて仕訳帳、総勘定元帳などが必要です。

会計の基礎知識がない方、確定申告書の書き方に不安がある方は、税理士に相談するか会計ソフト、確定申告ソフトを活用するのがおすすめです。

たとえば、「マネーフォワードクラウド確定申告」なら、専用アプリもあり、スマホでも確定申告ができます。

確定申告ソフト「マネーフォワード クラウド確定申告」

事業主借と事業主貸間に返済の概念はない

事業主借と事業主貸は個人事業主が事業とプライベートの資金を分けるために、「お金を借りた・貸した」という考え方で記帳するものです。

法律的な債務ではないため、実際に返済する必要はありません

確定申告時は相殺する

確定申告時には事業主借と事業主貸を相殺し、残高の差額を次年度の元入金に振替えます。

事業主借と事業主貸は決算をまたぐとリセットされるので、お金を返したり返してもらったりする必要がないのです。

残高を貸借対照表に計上する

事業主借や事業主貸の残高は、青色申告決算書の貸借対照表に計上します。

経費や売上にはならないため、所得金額には影響しません

元入金がマイナスになっても問題ない?

事業が赤字だったりプライベート用にお金を使い過ぎたりすると、元入金がマイナスになることがあります。

元入金がマイナスになることは問題ありませんが、事業用のお金を残しておくなど、なるべくマイナスにならないように注意しましょう。

何の事業主になる?決まってないなら注目の福祉事業を

ペット共生型障害者グループホーム「わおん」は、障害のある方と保護犬・保護猫が共に生活するグループホームです。

障がい者グループホームの不足」「空き家問題」「ペット殺処分問題」という社会問題の解決に取り組む福祉事業であること、未経験でも安定した経営ができる独自のビジネスモデルを採用していることから注目されています。

2020年以降は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、事業継続が難しくなるケースも出ています。

しかし、福祉事業者は万が一の場合、独立行政法人福祉医療機構による「新型コロナウイルス対応支援資金」の融資を受けることが可能です。

どんなビジネスで事業主になるか決まっていない方は、注目の福祉事業運営を検討してみてはいかがでしょうか。