目次
参画のきっかけは?
もともと私は会社員で、わおんに加盟する前から、グループホームの建物を建てることを決めていました。ただ物件自体は所有するものの、障がい者グループホームを運営したい方に賃貸で貸す等して、運営自体は他の人にしてもらおうと考えていました。そこで近隣の社会福祉法人や、障害福祉事業者に運営してもらえないかと聞いてみたのですが、そのタイミングではどこも希望される方がいませんでした。
他にどこか借りてくれるところがないかな、と探していたときに、わおんの広告を見つけたのです。犬や猫と一緒に住めるグループホームで、さらに、空き家を活用したコンセプトの着眼点に惹かれ、セミナーを聞きに行きました。
そのときに藤田さんの話を聞いて、方向性として賛同できる部分が多かったので、「アニスピさんで、自身の所有物件で障がい者グループホームをやってくれないか。もしくは、わおんに加盟している人で、ここを借りたい人はいないだろうか」と、お話をしました。その際に藤田さんから、「自身で運営してみては?」と助言され、たしかにシステムに則って進めていければできるかな、と思い、参画に至ったのです。
その他のFCの話は特に聞かず、わおんで進めていきました。
なぜ、障害福祉事業を始めようと思った?
もともと1棟目のグループホームが建っている土地は駐車場で所有しており、2棟目のグループホームのところには、私の実家が空き家として建っていました。
そのままにしていても仕方ないので、活用する計画を立てはじめました。賃貸で人が住むには少し田舎なので、事業をするには不安定。児童の事業等、いろいろ検討していたのですが、障害を抱えた方が住む場所とするのもありだな、と思い、物件建築の計画を進めました。
また、もともと私は会社員時代に住宅のメーカーにいたので、土地活用のジャンルとしてグループホームというものがあることは知っていました。グループホームの建物をつくる側でしたので、建てるオーナーさんや、運営する社会福祉法人、利用者さんとの接点はあり、仕組みとしては知っていました。
福祉事業であれば、賃貸ではあるが事業として安定していることもわかっていました。ただこの事業は近所からの理解を得づらい事業でもあるので、あまり近所が近くない田舎で運営するには、そういった面でも福祉事業は行いやすかったですし、建物のつくり方や、建物をつくったあとに利用者さんが使うことで発生する問題点を知っていたので、図面を起こすところから自身で携わって関わることができたということもあります。
そういったさまざまな条件が重なって、障害福祉事業を始めようと思い至りました。
開設までに苦労した点
器(建物)のことは知っていましたが、運営のことは知らないので、仕組みやポイントが分からないことがネックでした。自身がその事業について知らないまま始めたのは、本当に大変だったなと、始めてから思いました。
行政とのやり取りでは、町田市も東京都も風当たりが強く厳しかったです。
今は行政も数を把握しているので、「多いからもういらないよ」という対応をされることもありますが、当時は、数があまり把握できていなかったにもかかわらず、「明確に理由を言えない状況だが、あまり、外部参入をさせたくないのでは」「保守的なコミュニティにあまり入ってきてほしくない」という様子が垣間見えました。
開設後に苦労した点
現在は、女性棟1居室のみ空室があるが、それ以外は満床です。
開設後では、入居者さんの部分でかなり苦労しました。
最初は、軽度の精神・知的の方の受け入れを前提で始めたのですが、そんな中、1人目の利用者さんがいらっしゃいました。精神障害の利用者さんで、最初からトラブル続きで、最終的にその利用者さんは逮捕され、退去されてしまいました。その後も精神障害の方が3人いらっしゃいましたが、皆さん退去となってしまい、退去者は4人となりました。
最初の2名の方が退去されたタイミングで、グループホームの方針変更を決意しました。今までは、障害区分が軽度であれば誰でも、という体制でしたが、主として、知的の中重度の方を対象とするよう、方針を変更したのです。理由としては、運営していく中で、障害の中重度の人をグループホームとしては受けるべきだし、グループホームとして受けていきたいな、という風に、考えが変わっていったからです。
ただ、軽度の方を対象とするグループホームから、中重度を対象とするグループホームへと、コンセプトを大きく変えたことで、最初に入社した職員からは、多くの反対意見があがり、最初に入社された職員はサビ管を除いて全員辞めてしまう、ということもありました。私自身もかなり夜勤に入ったりと、住み込みのような状況で苦しかったです。
ただ、そのときに腹を括ってコンセプトを変更していなければ、ずるずると納得のいかない状態が続いて、今とはまったく違うグループホームになっていたと思います。ですので、このタイミングで中重度を受けたいとコンセプトを変更して良かったと思っています。
そこからは、職員の募集に関しても、外部の人たちに声をかける際にも、コンセプトに合わせ、障害区分の中重度を受け入れることを前提の内容に変更しています。
それからは、現在、障害区分が平均4程度で、職員も利用者さんも安定しています。職員さんの顔ぶれも1年半変化ありません。
現在、オーナーのグループホーム事業への関わり方は?
現場にはまだ、夜勤に週1~2くらいで入っています。
完全に現場との関わりを無くすつもりはありませんが、オーナー管理者として入っていますので、オーナー業務の手が回らなくなってしまうような事態は避けたいと考えています。直接支援に入ると、どうしてもその支援が第一優先となってしまうので、その他のことを後回しにしてしまっています。こちらに関しては、状況的に改善したいなと思っています。あとは、誰か管理者を任せられるような人がいるといいですね。
ただ、夜勤は時々入った方がいいなとも思っています。
利用者さん・職員さんの関係性や状況がよく見えてくるので、現場に入るのは続けていきたいです。
それと、新人研修も現状、任せられる人がいないので、自分自身で行っています。ただOJTに入ると、夜勤と変わらないくらい時間を取られます。
ただ、今は自分がやらざるを得ない状況です。OJT自体は絶対に必要だと思いますので、新人の方への1ヶ月のOJTに加えて、全職員への定期的なOJT(半年に1回程度)も行っています。
定期的なOJTは、仕事としているとだんだんと惰性で慣れが出てきてしまいますので、その修正のために今後も定期的に行っていきたいと考えています。
この事業で大切にしていること、やりがい、醍醐味
現在、この事業を始めて4年目となります。
やりがいと言えばやはり、利用者さんと話していて、変化が見える時はすごく嬉しいです。入居当初の個別支援計画と現在の個別支援計画では全然様子が違ってみえます。
入居の際にはあまり詳しい状況などを伝えていただけないことが多いですが、実際にご入居されてみると、皆さん、トラブルを抱えた状態であることがほとんどです。
入居から1~6ヶ月くらいで、利用者さんの本来の様子が見えてきて、そこでトラブルに直面し、それを乗り越えられて、変わって落ち着いた姿を見て「こんなにトラブルが改善されている」と思えるのは、とてもやりがいを感じます。
元をたどれば、トラブルを抱えているから障害と認定されているのであり、こういったサービスを利用しているのですから、トラブルはあって当たり前。トラブルがないと捉えているのが間違っており、「ある」前提で接することが大切だと思います。
相談員さんから、利用者さんの特性を意図的に隠されることはありませんが、「聞かなければ言わない」ということもあるので、事業所の質問力も大切です。支援を通して、「これは聞かなければいけないことだな」という、必要なポイントは学べたと思います。
また、職員さんもいろいろな人がいますが、人柄の部分が一番重要だなと思っています。職員研修や日々の業務を通して、職員さんも変わっていく様子が見られ、総じて人の成長や変化を感じられるのが、この事業をやっていてよかったな、やりがいだなと思える瞬間です。
モノではなく、人と人との仕事なので、その変化があることが楽しいですね。
保護動物
・ハニー:一般家庭の認知症のおばあさんが飼育しており、ごはんは野菜しかもらえず、栄養失調の状態で、バーニーズだが、13キロしか体重がありませんでした。また、小さいケージに押し込められており、股関節とひざ、しっぽが変形しており、肉球もピンクの状態(散歩に出ておらず、外を歩いていないため)。皮膚もぼろぼろで、あまりにもかわいそうな状況だったので、飼い主の家族が保護団体に譲渡。その保護団体が保健所の譲渡会に参加し、自分もその譲渡会に参加したことで、保護につながりました。以前、自分がバーニーズを飼育していた経験もあり、その子は40キロぐらいの大きさだったので、譲渡会参加時に、遠目でビーグルくらいの大きさしかないバーニーズをみてあまりにも衝撃でした。この子は引き取り手が出ないだろうなと思い、家族に相談し、その場で引取りを決意。最初は自分の家で元気になるまで面倒を見て、今ではホームで利用者さんと仲良く生活をしており、知らない人には番犬として活躍しています。
・チャコ(猫):グループホームの職員が家に遊びに来ていて、人馴れしている子を保護した。その経緯で、現在は、グループホームで生活をしています。
・小型のイヌの引き取りを検討中。
アニスピに参画して良かった点は?
きっかけをもらったこと。アニスピと出会わなければこの事業を始めていないと思うので、そういった意味では、とても感謝しています。
まず着眼点が良いですよね。動物と一緒に暮らすことは、利用者さんにとって、精神的にも人間的な成長の意味でもプラスになると思います。また、空き家を活用することは、空き家問題の解決にもつながると思うので、コンセプト含めて共感しています。
この事業は、バックアップが必要だし、ないと進められない事業だと思います。
最初はすべてが知らないことの連続で、「これ何?」という状態。これでは事業を進められないな、難しいな、と感じることがよくありました。
また、自分で進める意志やスタンスがないと、参画しても、継続できない人が出てくると思います。参画したからすべてやってもらえる、というスタンスだと全く進められないでしょう。
新規で始めるときには、あまりにも知らないことばかりなので、そこのサポートがないと知らないうちに時間が経ってしまい、いざ始まったら何もやっていない・できていないことばかりで、「どうしよう……」といったことが繰り返される。そうなると精神的にはつらいので、最初の段階で後手にならないよう、先手を打って、勉強をして、開設に向かう必要があると思います。
今だから話せる○○な話
開設当初のバックアップが行き届いていくと、もっといいなと思いました。
また、先程も言いましたが、自分で進める意志やスタンスがないと、参画しても継続できないでしょう。そこの意識について最初の段階でコンセンサスがとれていないと、やめていく人も多くなるのではと思います。そうしないと、アニスピのいい評価・悪い評価はずっと出てくるのではないでしょうか。
現在は体制も整ってきて、人の土台も出来てきていると思うし、今のSVさんはよくやってくださっています。
「こんなことをしたから、現在成功している」等の成功談
現在、弊社は、全体の利用者さんのバランスがいいと思っています。
やはり就労先・相談員さん等と、人の連携ができたことが大きいですね。全員、紹介から来た利用者さんです。
就労先で評判ができ、連鎖的に紹介してくれたり、相談員さんからの評判も良くなったりして、そこから紹介がもらえるようになった。
満床までに時間はとてもかかりましたが、そういった人とのつながりや評判を積み上げたことが成功につながったと感じます。そこで踏ん張ることができなかったら、終わっていたなとも思います。
満床にするために焦っていましたし、早く満床にしたかったですが、焦っても駄目だと気が付きました。利用したい方はいるのだから、ちゃんと紹介がもらえるまで事業所として頑張ろうと思えたことが、転機だと思います。
営業はかなり回りましたね。何度も、何週も回っていました。何度も訪問すると、「じゃあ、1人ぐらい……」という感じで紹介をしてくれました。そこがスタートで、体験に繋がり、利用者さんが「良かった」と言ってくれると、その後も「じゃあもう1人どうですか」という感じで、どんどんと入居に繋がっていきました。
弊社のグループホームのコンセプトに合わない問い合わせも多くありました。
ただ、こんなグループホームにしたい、というコンセプトが明確にあったので、障害種別に関わらず「うちのグループホームに入居する場合の条件」を作成したことも、現在の成功につながっていると思います。
今後の展望
今、町田は行政的に(介護包括型の)グループホームを増やせない状況にあるのだと思います。行政が非協力的で、相談に行くと、最初からけんか腰のような対応をされてしまいます。
うまく折り合いをつけるのが難しく、積極的に(介護包括型の)グループホームの相談にいけないという状況です。
今後、中重度を対象に展開しようと思っているので、町田市の意向も取り入れ、日中サービス支援型のグループホームの展開を検討していこうと思っています。
ただ、職員さんの確保や、中重度の利用者さんの支援ができるような職員育成で苦労している部分もありますので、職員が固まらないことが容易に想像できます。その部分をケアできるかどうかが最大のポイントだと思っています。
利用者さんがいるのもわかっていますし、入居を希望する声もかけられていますので、なんとか進めていきたいですね。
その手立てとして、町田で大きく福祉事業を展開している事業者と業務提携を結びました。職員との交流が図れるように依頼をしているところです。そこの職員さんのレベルは、重度の利用者対応のスキルとしてとても高いです。職員の交流ができて、うちの職員のレベルが上がったり、そこの事業者で勤める職員さんがフォローに入ってくれたりするようなことに繋がれば、日中サービス支援型も開設できるかなと思っています。
ただ、建物がなければ職員さんの確保はできません。ですので、今はどうするか検討中です。土地と建物の確保も必要なので、2年くらいの長期スパンで検討しています。
これから参画する方に向けて、先輩オーナーからひと言
オーナーは、さまざまなかかわり方があると思います。
経営のことだけを考えたら、オーナー自身が直接現場に関わらずに、管理者・サビ管を雇ってグループホーム運営する、というのも参画の一つの方法だと思います。
ただ私は、現場に入ることが楽しいと思うので、私のようにどっぷり現場に入る方法もあると思います。
この2つのうちどちらのスタンスなのか、明確にすることが重要だと考えます。
どっちつかずのスタンスでは、難しいし、うまくいかないでしょう。
個人的には、現場に入っていくオーナーが増えると嬉しいです。この業界は、多くの人が苦労し努力はしていますが、なかなか報われない状況で、かなり環境が遅れている業界だなと感じています。
この点を解決するためには、新しい人たちが現場で利用者さんや福祉事業の人と関わりながら、この業態の問題解決に取組み、大きくうねりを出さないと、変わっていかないと思います。そういった意味でも、経営の立場のみではなく、現場に入って一緒にこの業界を成長させてくれるような方がたくさん参入してくれると、大きく変革するための加速になるのではと思いますし、また、障害に対して理解のある方が多く参入してくれると有難いですね。