「運動療法はホントに精神疾患に効果的?|7日間歩いた発達障害当事者の筆者」
ウォーキングや軽い運動が健康に良い!というのは、本当か?
不安になりがちで1日の運動時間は30分もない生活
40代後半で、発達障害グレーゾーンの筆者には、不眠症診断が下っている。また、社会適応がギリギリできているので、発達障害診断は下っていないが、いつでも何かを失敗していないか・忘れていないかなど、不安障害気味でもある。
コロナ禍の前から、完全テレワークでライター兼Webサイトの編集長(https://ai-deal.jp/)をしている筆者の運動時間は皆無に等しかった。そこに拍車をかけたのが、自宅から徒歩5分の場所にできた24時間営業のスーパーマーケットだ。しかも、買いだめする癖があった筆者の運動時間は、1日で30分どころか外出しない日も多かった。
だけど、健康を全く気にしていなかったわけでもない。健康食品は大好きで、毎月万単位のお金を使っていた。
しかし、健康食品をいくらとってもよくならないのは、精神的に不安定なことだった。親しい人から、定期的に「何でそんなに情緒不安定になるの?」と聞かれるほどだった。
とどめになったのは、原因不明の体調不良で3週間寝込んだこと
1か月前に、原因不明の体調不良で、約3週間寝込んだことがある。とにかく体がだるく、微熱を繰り返した。食事も満足にしておらず、ほぼ1日をベッドの中で過ごす日々。PCR検査を受けても、結果は陰性。いつ良くなるのか分からず、寝ようと思っても、もんもんとしてなかなか寝付けない。
人は、1週間の寝たきりの状態になると、15%も筋力が低下する。3~5週間で50%もの筋力が落ちるといわれている。「寝たきり」というと、お年寄りの話じゃないかと思う読者も多いだろう。年齢が若くても、寝てばかりいれば、いわゆる「廃用症候群」になるのだ。
(出典 LIFUL介護 廃用症候群│1週間の寝たきりで15%の筋力低下も
https://kaigo.homes.co.jp/manual/healthcare/sick/haiyoshokogun/)
その寝たきりの3週間で、微熱は下がったが、体力は戻らない。筋力を病前に戻そうと、プロテインでたんぱく質を補給した。だけど、ちょっと歩くと足を捻挫する。足をかばって歩くと、今度は腰が痛くなる。仕事をしていても、30分もすると疲れてしまう。肩はバリバリに凝り、頭痛がする。
ある朝、腰が痛くて目が覚めた。ぎっくり腰を疑った筆者は、近所の整形外科クリニックを受診することに。医師に言われたのは「運動不足ですね~。1日にどれくらい運動します?」
だった。電動自転車は運動のうちに入りませんよ!と言われると、運動時間はないに等しかった。大量の薬を処方されることになった。
そんな状態なので、会社を首になるんじゃないか(上司は休めと言っているのに)、このまま原稿の納期を守れずにライターとして書けなくなるんじゃないかと、不安感はピークに!
「私、会社を辞めます」「もう編集長できる自信がありません」などと、外注のライターさんや上司に連絡し、気分は不治の病にかかった患者である。今思い出すと、とても恥ずかしいけれど、その時は、本当に体も心も病んでしまった。
「ウォーキングしてみれば?」という上司からの福音!
そんな状態を見るに見かねたPSW(精神保健福祉士)の上司に「ウォーキングしてみなさい!」と言われる。普段から運動する習慣のなかった筆者は「そんなの続くか!」だったし「めんどくさい」「そりゃ運動は体にいいって言うけど、私は体調が悪いんだよ!」と思った。だけど、お医者さんも言っていることだし、とりあえず7日間、ウォーキングを続けてみようと決めた。
初日から感じた爽快感とその効果!
筆者は大学時代にはソフトテニスサークルで、全国大会を目指したり、飲んだ翌日にコートで汗を流したりと、スポーツは好きだった。だけど、社会人になってから、めっきり運動の機会は減った。発達障害の特性で、何事も白黒をつけたがる性格なので、「運動をする=スポーツする=大会を目指す」という思考回路になり、働きながらスポーツをすることは苦行になっていった。大会を目指すには、当たり前だが、練習時間がかなり必要だからだ。むしろ、大会を目指さずして何が運動だと思っていた。それなので、ウォーキングなんて何の効果もないだろうとバカにしていたのだ。
なので、目的がなければ続かないと思い、趣味の一眼レフで写真を撮影しながらのウォーキングをすることにした。
腰痛を抱えながら歩き出すと、体がバリバリと音を立てる。だけど、3分も歩くと、爽快な気持ちになった。腰の痛みも心なしか和らいだ気がした。長らく運動をしていない筆者は汗をかかない体質になっていたので、そのときも汗はかかなかった。だけど、30分ほど歩くうちに気分は晴れ、一番に解消したのは、便秘と肩こりだった。
便秘薬を常用していた筆者にとり、自然な便意があることは、何年振りかの変化だった。便秘が治るのなら明日も歩いてみよう。
2日目以降は体が運動を求めるように!
朝、起きると、久しぶりの筋肉痛!30分歩いただけで、筋肉痛である。どれだけ筋力が落ちているんだと驚いた。2年のテレワークですっかり体はなまっていたようだ。
なので、2日目は、朝6時~7時の1時間のウォーキングにチャレンジ。朝からのウォーキングはいいと一般的に言われているけど、筆者はその後、眠くなってしまい二度寝してしまった。朝に歩くと良い説と、朝は血液がドロドロになっているので、心筋梗塞や脳卒中を起こすリスクが高い説がある。高血圧の持病持ちの筆者には、あまり向いていないようだった。
だけど、通勤しない筆者にとり、久しぶりに見た朝の風景だった。
3日目~6日目は夜のウォーキングに切り替える
だんだんと歩くことが楽しみになってきたので、歩く時間は伸びて行った。子どもがまだ小学3年生なので、夜に外出する習慣はほとんどなかった。だけど、1時間くらいなら、お留守番ができるので、ウォーキングを続けた。
夜の景色は昼間と違って、新鮮でよかった。
何より感じたのは、メンタルの安定だった。あんなに不安感が強かったのに、仕事にやる気が出た。不安を感じることもほとんどなくなった。よく眠れる。いいこと尽くしじゃないか!と気づきだしてからは、ウォーキングの時間が待ち遠しくなっていった。また、あんなにかかなかった汗をかくようになって、体がほてることもなくなっていった。自律神経に作用しているのだろう。
肥満気味の息子が一緒に歩き出す
息子も筆者同様、発達障害グレーゾーンで、睡眠障害を持っている。毎日、ウォーキングの時間にいそいそと楽し気に出かける母を見て、一緒に行きたがった。
息子も夜の散歩に参加するようになる。
肥満児とはいえ、小学校3年生の男子は、体力がある。「早く、早く!」と言われて、母はついていくのがやっとだった。
息子も不安を抱えがちな子だが、そんな息子のメンタルも安定してきたように思う。ウォーキングが日課になっていった。
最終日の7日目に思ったこと
体を動かすことが苦ではなくなった。そうなると、部屋を片付けたくなった。この写真のテーブルは、7日前には書類や洗濯物で埋まっていた。だけど、体を動かすことがとても楽になって、部屋を片付けようという気力がわいた。
息子は自分のベッド周りを、筆者は部屋の掃除を積極的にするようになった。
よく「汚部屋に住むと精神疾患になる」「メンタルに悪影響」といった記事を見かけるが、筆者の感じたのはその逆だ。
運動をしないと体を動かすことが億劫になる。そして、体を動かすのが億劫になると、片付けをしなくなる。汚部屋が出来上がる。その結果、散らかり具合を見て、精神状態がより悪化するのではないかと思う。
自分の予想に反し、いやいや始めたウォーキングは、7日目以降も、習慣化している。
ウォーキングや適度な運動がもたらす心理面の効果
ウォーキングやゆるやかな運動をすると、ドーパミンやセロトニン、エンドルフィン、オキシトシンといった「幸福ホルモン」や、アドレナリンの分泌がされる。そうすると人は、明るい気持ちになり、情緒も安定するのだ。
7日前の筆者のように、運動といえば、大会を目指す・誰かと競うというイメージのある人もいるだろう。だけど、知人から言われた「誰かと競うスポーツと、自分の健康維持のための適度な運動は別物」という言葉が身に染みる。その知人もライターなので、基本的に、家から出ないで仕事をする生活だ。なので、意識的に、運動をする時間を取って、メンタルとフィジカルの健康を保っているという。
あまりに効果があったので、「ウォーキングを始めたらうつが治る?!|実際に歩いてみた不安になりがちな私(https://note.com/yu_iino/n/n4b4d55364396)」という記事を書いたが、コメント欄で「自分は運動療法でうつが治った!」「不眠が解消された!」「本当に気持ちいいからみんなに試して欲しい」という、精神疾患当事者や経験者からの多数の声が寄せられた。
厚生労働省も
‘’適度な運動や、バランスのとれた栄養・食生活は身体だけでなくこころの健康においても重要な基礎となるものである“
とこころの病と適度な運動の相関性について情報を提供しているほどだ。
(引用 厚生労働省 休養・こころの健康
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b3.html)
これを読んでくださっている方にもぜひ、運動療法の効果を実感して欲しい。
文 田口ゆう