【福祉書評5】透明なゆりかご~産婦人科医院看護師見習い日記〜

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透明なゆりかご~産婦人科医院看護師見習い日記〜

今回、ご紹介するのは、「透明なゆりかご~産婦人科医院看護師見習い日記~」 (Kissコミックス) だ。

 

https://amzn.to/2Ehjpdt

 

全8冊だが、現在、試し読みもできるので、ぜひ、読んでみてもらいたい。

 

本作の作者は沖田×華(おきた ばっか)さん。

 

小学4年生の頃に学習障害、注意欠陥多動性障害、中学生の頃にアスペルガー症候群と診断される。診断された際、本人はこれを認めず、成人してから自身の障害を自覚した。

 

幼少期は忘れ物が多く、簡単な計算や読み書きも出来なかったため、同級生からのいじめや、教師からの体罰を受ける日々を送る。高校卒業後に准看護師の資格、その後、正看護師の資格を取ったものの、他者とうまくコミュニケーションがとれず、首吊り自殺を図る。失その後、看護師を辞め風俗業に転身。

 

ソープランド以外のあらゆる風俗店で働く。

 

その後、漫画家に転身したという異色の経歴の持ち主。

 

そんな発達障害当事者でもある彼女が描いた「透明なゆりかご~産婦人科医院看護師見習い日記~」はNHKでドラマ化もされたので、ご存じの方も多いだろう。

 

主人公は高校3年生の夏休みに、来年に准看護師になることを目指している、専門学校生時代の作者自身。

 

当時、見習いだった主人公は、注射等の医療行為はできず、病院の産婦人科で、簡単な雑用と介助をしていた。

 

そこで、主人公は、医師から「90年代の日本の三大死亡原因の第1位はアウス(人工妊娠中絶)」だと知る。

 

ここで、都道府県別の件数の統計(平成15年度)を見てみると、全国で319,831件の人工妊娠中絶が行われている。

 

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/03/hyou5.html

平成15年度 保健・衛生行政業務報告結果の概要(衛生行政報告例)厚生労働省

 

作者のこの病院での仕事の一つは、人工中絶した胎児を集め、(火葬)業者に渡すことだ。

 

そこで、作者はだんだんと慣れていってしまうのだけど、この世に「おめでとう」と言ってもらえない命の多さに戸惑う日々。

 

こっそりと心の中で「バイバイ」とお別れを告げる。

 

そのうち作者は「命って何だろう」と考えるようになる。

 

しかし、この産婦人科では当然、出産する妊婦もいるので、作者はその出産に立ち会い感動する。

 

‘’消える命と生まれる命がたえず交差する場所‘’で、作者はバイトを続けていく。

 

描かれ方としてはとても淡々としたタッチで、感動を強いるものではない。

 

だけど、回を重ねるごとに反響は広がり、ドラマ化された。

 

出産に伴う家族の葛藤や、失われる命、誕生する命…様々な命の尊さがこの漫画を通じて伝わってくる。

 

男性の私にとって、出産や妊娠、ましてや中絶の話は知らないことだらけだ。

 

しかし、上記、厚労省の統計を見ると、全国で483人の15歳未満の子どもたちが妊娠中絶しているという現実がある。

 

日本では性についてはオープンに語れる雰囲気はなく、特に青少年はきちんとした知識なしに性行為を行い、中絶してしまうという現実がある。

 

そういった意味で、この漫画は、義務教育の中で教科書として取り入れてもいいと思うくらいの良書だ。

 

弊社でも今後、青少年の正しい避妊や性に関する知識を啓発するイベントは企画していきたい。

 

あいである広場(https://ai-deal.jp/)でも、先日、立石美津子さんが新型出生前診断に関する記事を書いてくれている。

 

https://ai-deal.jp/etc/post-3025/

 

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