本日は、「Newton別冊『精神科医が語る 精神の病気』」Kindle版 科学雑誌Newton (著)をご紹介する。
私は図や統計が豊富なので、よくNewtonを読むのだが、この別冊は精神の病に特化した別冊。特に統計は新しいサービスを考えるにあたり、ヒントとなることが多い。福祉事業者にとり、精神疾患の知識と理解は絶対不可欠で、最新の治療法やそのメカニズムを知っておくことは必須だろう。
精神保健福祉士(PSW)の私にとり、知識のアップデートのための読書は欠かせない習慣だ。
日本の精神医療の歴史は11世紀後半から始まった。明治になるまでは精神病は「物の怪がついた」とみなされ、主な治療法は加持祈祷など、スピリチュアルなものだった。
また、精神病は感染するものと考えられていたため、患者は基本的に隔離していた。自宅の一室や敷地内に監禁する「私宅監置」が一般的で、その中で人格荒廃に至る人も多数いた。
日本初の公立病院ができたのは、1875年。明治初期の頃である。
その後、ドイツに留学していた呉秀三教授が私宅監置に異議を唱える(呉教授の現代語訳版の書籍のレビューはまたの機会にしたい)。
19世紀後半から20世紀前半には、精神病の様々な治療法が誕生する。20世紀初頭には、電気けいれん療法やインスリン・ショック療法・ロボトミー手術など、今では考えられないような療法もあった。
呉が都立松沢病院で精神病患者に医療を施したのを皮切りに、つい最近まで日本では病院を増やし続ける方針をとっていた。
戦後、病院が増え続けた背景には、自宅でみるよりも入院させた方が安上がりな「精神科特例」の影響もある。
日本が海外と比較し、入院人数や日数がけた違いに多いのは、こういった背景からだ。
1984年には宇都宮事件が起こり、病院内での患者へのリンチや無資格者による医療行為が明るみとなる。
WHOからの勧告もあり、日本の精神医療の政策は、入院治療中心から、地域で生活しながらの治療へと大きく転換していく。
2004年以降は、診療報酬の改定により、長期入院すると病院が損する仕組みとなり、「病院から地域へ」の流れを後押しした。
(出典)厚生労働省「病院報告」https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000108755_12.pdf)
そこで弊社では、サードプレイスとしてのグループホーム事業を展開し、「犬友」などを通じ、精神病患者の地域での暮らしの移行をサポートする役割を担っていこうと思っている。
精神療法にも薬物治療以外にも、多様なアプローチが存在する。
本書では、認知行動療法やSST、マインドフルネスにいたるまで、様々な療法が紹介されている。
弊社のグループホームにおいても、薬物療法だけに限定せず、障害を持った方のQOL向上につながる療法は、利用者様のニーズに応じて提案していきたいと思っている。
本書は図を多用し、視覚的に訴えるつくりにもなっているので、障害当事者の方にも読みやすいものだと感じた。
事業所に一冊置いておいてもいいと思える内容だった。