今回は、社会福祉法人てくとこ会(http://www.tekutoko.or.jp/)が発行している触法障害者支援に関する報告書をご紹介する。平成22年度厚生労働省障害者総合福祉推進事業に応募にあたり、同法人内においても、触法障害者をテーマにすることには賛否両論が巻き起こったという。
各職員の中にも、触法問題に関しては避けて通りたい、触法という事実や課題から目を背けたいという気持ちがあったという。
また、同法人の運営する施設の中には、住宅街にあるものも多く、触法障害者を支援することが近隣住民からの反対運動を巻き起こすのではないかとの不安もあった。
しかし、約半年の活動において、同じ志を持つ仲間ができるなど、偏見に打ち勝ったのではないかとあとがきでは書かれている。
今回の取り組みは、①高知法テラス、②高知県司法書士会、③高知保護観察所、 ④高知県地 域福祉政策課、⑤高知刑務所、⑥高知うろこの会、⑦高知クレジット・サラ金対策協議会、 ⑧高知市健康と生活を守る会、⑨高知県社会福祉士会、⑩高知市元気いきがい課、 ⑪高知 市社会福祉協議会、⑫社会福祉法人てくとこ会、⑬自立援助ホーム「南風」、⑭社会福祉 法人昭和会 旭福祉センター、⑮ NPO 法人 相談支援センターmirai、⑰社会福祉 法人あじさい園 障害者相談支援事業所、⑱高知市誠和園、⑲高知女子大社会福祉学部等 と異業種の人々が連携してなされた。
異業種連携なしでは、触法問題は解決しないことを痛感した。
グループホームを運営する弊社においても、住宅地への施設開設において課題となるのは、近隣住民の障害者への理解の問題だ。
2018年ごろに巻き起こった、東京都港区における、児童相談所設立に対する住民の反対運動に関するニュースを覚えているだろうか。
https://www.fnn.jp/articles/-/2553
児童相談所に入る子どもたちが街の治安を悪化させるなどの理由から、住民の反発は根強かった。
同法人が触法障害者問題にセンシティブになったのは、こういった社会の空気があるからだろう。
また、同じ施設の利用者からの反感も想定される。
しかし、触法障害者は自身の障害の問題と地域や家族、職場からの受け入れ態勢のなさから、社会で居場所を見いだせず、再犯してしまうという負のループに陥るケースが多い。 (図:同書11ページより)
本人の問題としては、再犯に繋がる環境と本人の内面的な問題でが挙げられている。
悪い仲間との関係性を切れない、働く場所がない、心から信頼できる人がいない。
仕事や日中活動の場がないという問題もある。
雇用側の偏見や受け入れがないために、安定した収入が得られない。
雇用する側としては、触法障害者を雇うための理解が乏しさやメリットがデメリットを上回る。
また本人の障害特性や性格にマッチングした仕事を紹介する制度がないことがあげられる。
そして、近隣住民が触法者、障がい者を嫌がる、再犯の恐怖から受け容れられないこと、大家さんが嫌がるなどことから、住まいを見つけるのも一苦労だ。
保証人がおらず、火の扱い等が信頼できないなどの課題がある。
しかし、刑務所内で十分な準備や支援の見通しができてない状況でも、出所は決まってしまう。
多くの触法障害者は家族との縁が切れている。
困った際にどこに相談していいのかも分からない。
関係機関(医療・保健・福祉・教育・雇用・司法)との連携がないのが現状だ。
研修会が開催されているが、多くの演者から医療・司法・福祉の連携の必要性が強調されていたという。
実際の事例とその解決法が多数紹介されているが、どの事例も比較的軽度の障害を持った方たちなのが特徴的だ。
「自分は支援をうけなくてもやっていける」という気持ちが本人にあるため、自主的に福祉や医療、行政の支援につながらない。
障害福祉の世界では「軽度が重度」と言われるが、軽度の障害は周囲の大人たちからも見過ごされがちだ。
また親も障害者であるケースを考えると、現在の申請主義のシステムに限界があることが分かる。
弊社においても、利用者の多くは軽度の障害を持った方であり、その多くに居場所がなく、グループホームで共同生活をしている。
触法障害者の受け入れに対するケーススタディを参考に、弊社においても議論をしていきたい。
そして、他業種の方々との連携を大切に支援していきたいと改めて思った。