【福祉電論1】NHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」~自分で死を選べることができるということはどうやって生きるかを選択することと同じくらい大事なこと~

代表ブログ

今回は【福祉電論】です。書評ではなく電論です。

 

NHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」~自分で死を選べることができるということはどうやって生きるかを選択することと同じくらい大事なこと~を見て。

 

「Nスペ 社会(NHKオンデマンド)エピソード144「彼女は安楽死を選んだ」2019年6月2日」

https://amzn.to/34f9ZsA

 

をご紹介する。

 

小島ミナさん(51歳)

 

2018年11月スイスで日本人女性が安楽死を行った。

 

女性は体の機能が失われていく神経難病である多系統萎縮症を患っていた。

 

安楽死の選択肢に寄り添い続けたのは姉妹。

 

「私たちは間違っていないのか。安楽死を受け入れていいのか」

 

という苦悩があったという。

 

患者の死期を積極的には早める安楽死は日本では認められていない。

 

スイスでは海外からの安楽死希望者を受け入れており、日本からの希望者も受け入れている。

 

安楽死団体の会長は

 

「今年(取材当時の2018年)だけでも6人。急激に増えている」

 

と語っている。

 

なぜ安楽死は増えているのか。

 

この番組ではミナさんが生前に書き残した手記とその気持ちに向き合ってきた家族の証言から、安楽死の是非とその背景について解き明かしている。

 

ミナさんは全身を襲う激しい痛みを抑えるため、薬を服用していた。

 

話す力も徐々に失われていっている。

 

多系統萎縮症は進行すると体の機能が奪われ、命を伸ばすためには人工呼吸器や胃ろうが必要となる。

 

原因も治療法も充分に分かっていない難病だ。

 

ミナさんはスイスの安楽死団体に登録を行っているが、私はそのメールの

 

「私が私であるうちに安楽死をほどこしてください」

 

という言葉は心に残った。

 

自分の尊厳を守るための安楽死だが、日本ではその議論が進んでおらず、タブー視されてきた。

 

ミナさんは死に対する議論が日本でも深まればという思いから、取材に応じている。

 

「自分で死を選べることができるということはどうやって生きるかを選択することと同じくらい大事なこと」

 

とミナさんは語る。

 

安楽死をみんなで考えることは、ミナさんの願いでもある。

 

ミナさんは独立心の強い女性で、ソウル大学を卒業後、韓国語の通訳者として活躍。

 

40代半ば過ぎ、第二の人生を歩もうと、児童養護施設に転職しようとしたところ、病魔に襲われた。

 

当時のブログには、体が徐々に自由にならなくなっていくことの戸惑いをつづっている。

 

しかし、そんな日々の中でも姉たちとの会話を楽しみ、笑いあう生活に楽しみを見出していた。

 

だが、医師に紹介された病院で、将来自分もそうなると言われていた、人工呼吸器をつけた患者を目の当たりにする。

 

そこから、ミナさんは自殺を考えるようになる。

 

体に力が入らず未遂に終わるが、実際に自殺を試みもした。

 

自殺未遂を繰り返すミナさんが最後にすがったのが、安楽死という最期のあり方だった。

 

日本においては終末期医療の現場で、延命措置の中止や差し控えをする「消極的安楽死」は認められているが、致死薬の処方・投与をする「積極的安楽死」は認められていない。

 

これまで医師が逮捕されたこともあり、医療界では踏み込んだ議論はされていない。

 

ミナさんの安楽死については家族の中でも、意見は分かれた。

 

しかし、ミナさんは「自分の尊厳を守るため」に安楽死を選択することになる。

 

番組内では、ミナさんとは対照的に、家族と過ごす何気ない時間に喜びを見いだして、延命治療を選択した女性も出てくる。

 

この番組を観て、私はいとこの藤田正裕のことを考えていた。

 

彼は31歳を目前にしてALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症した。

 

「99%ありがとう(https://amzn.to/3iqN9TE)」の著者でもあるヒロは、広告プランナーとして、表現者として、ALSの治療法を確立するために「一般社団法人END ALS(エンド・エー・エル・エス)」を立ち上げた。

 

日本では議論が進んでいない安楽死の問題だが、私は彼を思うと、家族のエゴかもしれないが、それでも生きるという選択をして欲しいと痛切に思った。

 

弊社においても、個人としても、人の尊厳と安楽死の問題は、議論していきたいと思う。