僕たち福祉事業者の最終目標は「障害のある人たちの経済的自立」か|「個人として尊厳を尊重される」支援のあり方とは?
「論語(志)」が先で、「算盤(収益)」が上がってくる
僕が福祉業界に入ったのは、22歳の時です。26歳で起業してから、大切にしているのは、基本に忠実に事業を展開していくことです。尊敬する人は渋沢栄一です。
最近では、2024年度発行予定の1万円札の肖像として採用されることで話題になりました。日本を代表する経済人として、また初代紙幣頭(後の印刷局長)として有名ですが、実は現在の社会福祉協議会を創設したのも渋沢です。その考えの中で好きなのが、大正5年(1916年)に出版された『論語と算盤』に出てくる、「論語(志)」が先で結果的に算盤(収益)が出るというものです。僕は、福祉事業者は道徳的であれとは思いません。が、困っている人たちを助けてあげたいという気持ちや思い・志が先にあり、その結果として収益が上がるものだと考えています。
障害福祉事業展開の原則
介護保険法や障害者総合支援法の根拠となるものは何でしょうか?
それは、憲法第25条の生存権です。
憲法第25条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という文言はご存じの方も多いでしょう。しかし、日本国憲法が制定されたのは、1945年です。戦後の焼け野原の頃の「最低限度の生活」と現在のそれでは、当然、異なります。何が「最低限度」なのかは時代や国により変わっていきます。
障害者グループホームを運営する際に、必ず守らなければいけない法律があります。それは、障害者総合支援法(平成25年4月1日に施行)です。障害者総合支援法は図6にあるように、障害のある人の支援をする法律で、正式名称は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」です。
ここで注意して欲しいのが、理念として掲げられている「1.障害の有無にかかわらず、全ての国民が、基本的人権を持つ個人として尊厳を尊重され、共に生きる社会を実現すること」という部分です。障害福祉事業者の中でも誤解している方が多いのですが、この文言の中に「自立」という言葉は入っていません。
障害福祉の現場で働いていると、「障害のある人たちを自立させよう」としがちです。ですが、本来は「個人として尊厳を尊重され」とあるように、本人に働きたい・一人暮らしをしたいという意志があればそれは支援すべきです。ここは役所の中にも理解していない方々がいますが、「経済的自立」が最終目的ではありません。
ですので、入所にあたっては、利用者本人の希望を合った利用計画書を作成しましょう。
障害者総合支援法はあくまでも達成するのが難しいから「理念」であって、現実の社会と法律のギャップがあるのは当然です。役所の人が言うからと無条件に受け入れるのではなく、僕たち福祉事業者が現実に即した形で、制度を改善していけることが理想ですね!
「藤田英明ライブ福祉スクール(https://anispi-seminar.peatix.com/)」より抜粋
文 田口ゆう