【転載】メンタリストDaiGoのホームレス・生活保護受給者差別問題|ホームレス取材の大御所村田らむが斬る

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某有名人がYou Tubeにて、ホームレスと生活保護受給者に対して差別的な発言をしたとして、炎上騒ぎになっていた。

 

問題の動画を見てみると、

 

「僕は生活保護の人たちにお金を払うために税金をおさめているわけではない」

 

「ホームレスの命はどうでもいい。どっちかというとホームレスっていないほうがよくない? 正直邪魔だしさ」

 

などとなかなかえげつないことを話していた。もちろん

 

「ひどいこと言うなあ」

 

と思って眉をひそめたが、どこか類型的なありきたりな内容にも聞こえた。

 

テレビやYou Tubeの中ではこのようなヘイト発言はあまり聞かないが、リアルな社会ではこのような発言で溢れている。

 

 

僕は20年以上前からホームレスを取材して、本も6冊出している。そのことを知った人に、

 

「ホームレスなんて、あれは結局働きたくない、サボってる連中だろ? 取材して意味あるのか?」

 

「昔だったら浮浪罪で捕まえられてたはずだ。みんな集めて処刑すればいいんだよ。今の法律は甘すぎるんだよ!!」

 

などと酷い意見を聞かされたのは一度や二度ではない。

 

尊敬を仰ぐ、有名な作家やイラストレーターからも言われたことがあった。

 

 

『ホームレス』『生活保護受給者』をカテゴライズして、雑にレッテルを貼って、まるで『1人の不必要な人間』のように扱うのは良くない。

 

 

 

分かりやすく言えば、

 

「ホームレスだって、生活保護受給者だって、人それぞれで性格も環境も全く違う。大雑把にまとめてヘイトを煽るのは問題だ」ということだ。

もちろん彼らに話を聞いて統計を取ることは大事だ。

 

「ホームレス生活をしている人の多くの割合に知的障害が見られる。アルコール依存症である人も少なくない」

 

「野宿生活をしている人は廃品回収で日銭を稼いでる人が多い。中でもアルミ缶回収をしている人が多い」

 

というようなアンケートに基づいたデーターは、生きたデーターだ。

 

データーに基づいて、対策を立てたり、援助をすることもできる。

 

反面、

 

「ホームレスは結局やる気がない人間だ」

 

「生活保護受給者は働いてる人間をあざ笑っている」

 

などと言うようなのは、統計ではなく根拠のない個人の妄想の情報だ。

 

 

リアルに、ホームレスや生活保護受給者としゃべったことがない人が、頭の中で作り出した「憎むべき人間」が持つ間違った特性である。たとえ一部は重なる部分があったとしても、意味がない。

 

データーと妄想情報は混同しがちなのだ。

 

 

 

 

そういう妄想情報に基づいて、ヘイトスピーチをする人に対して、いくら僕が

 

「そんなことないですよ。野宿生活しながらもほとんどの人は働いてますよ。工場で働いている人もいます」

 

と言ったところで、ほとんどの人は聞く耳を持たない。

 

 

 

 

「左翼や保護団体みたいなこと言って!! 甘やかしすぎだ!!」

 

なんて怒られたりする。

 

 

 

 

実際の所、筆者は左翼や保護団体にはめちゃくちゃ嫌われているので、全然そんなことはない。とある左翼団体には囲まれて暴行されそうになったことすらある。

 

 

 

 

そういう団体が言う、

 

「ホームレスは全員、働きたいと思ってます」

 

「ホームレスには悪人はいません」

 

というのも、また妄想情報だ。

 

ホームレスの中には、働きたくない人もいるし、悪人だっている。

 

 

 

 

実際よりも良く見せたい、プロパガンダだ。

 

実際、泥棒を繰り返していたホームレスもいたし、仲間を河川敷に生き埋めにしてお金を奪ったホームレスもいた。

 

 

 

 

結局、ホームレスという存在を語るとすると

 

「いい人も悪い人もいます。やる気がある人もない人もいます。お金を持っていない人が多いですが、中には持っている人もいます。家族がない人が多いですが、頻繁に家族と会う人もいます」

 

みたいな歯切れの悪い結論になってしまう。

 

これではピンとこないよ!! と思うかもしれないが、でも世の中そんなものなのだ。

 

 

 

そうやって、考えていると、この問題は血液型占いに似ているなあと思った。

血液型占いはABO式血液型をもちいる占いで、実は日本独特の占いだ。

 

ABO式血液型は輸血や遺伝などで役に立つ分類法だ。もしA型にB型の血液を輸血したら死んでしまうのだから、それはもうとても重要な情報だ。

 

 

 

 

ただ、血液型と性格の関係性については科学的根拠は全くない。つまり血液型占いは全部、インチキだということだ。

 

 

 

 

だがむしろ、ABO血液型に対する正しい情報よりも、血液型占いの情報の方が頒布しているだろう。

 

「A型は几帳面」

「B型は奇人」

「O型はズボラ」

「AB型は二重人格」

 

なんていうのをみんな一度は聞いたことがあるだろう。これらは全部、妄想情報だ。

 

 

 

 

これらの情報がなぜ広がるかというと、シンプルで覚えやすいからだ。

 

一人ひとり全く違う複雑怪奇な人間を、あっさりと4パターンに分ける事ができる。

 

 

 

 

遊びでやっているならまだしも

「B型はうちでは雇いません」

などと言い出す馬鹿な会社が現実にいた。

 

 

 

 

最近では、ブラハラ(ブラッドタイプ・ハラスメント)という言葉も生まれ「血液型を根拠に人を差別するのは良くない」という考えが徐々に根付いてきている。

 

「ホームレス=怠け者」

 

「生活保護受給者=サボる卑劣感」

 

という妄想情報に基づいたレッテルはとても貼りやすい。

 

 

 

 

その他の大事な複雑な情報は全部抜け落ちて、単純化された情報だけが残る。

そこにヘイトが生まれる。

 

 

 

 

「いやいや、そんなオーバーなことじゃないでしょ!!」

 

と思う人もいるだろう。

 

 

 

 

だけど、これは

 

「ユダヤ人は悪だ」

 

「精神障害者は不要な存在だ」

 

として、大虐殺を行ったナチスととても近い考え方だ。

韓国人に対して強烈なヘイト感情がある人に話を聞いてみると、根っこの部分にはとても幼稚な単純化された情報があったりする。

 

 

 

 

ヘイトが高まると、実際に攻撃する人も出てくるだろう。

それは暴力を振るう人にとっては「正義の暴力」だ。「正義の暴力」はホームレスにも振るわれる。

 

 

 

 

僕は20年ホームレスを取材しているが、多くのホームレスが暴力を受けている。

寝ているところを蹴られたり、家の中に花火を打ち込まれたり、石を投げつけられたり。殺人にまで及んだケースも少なくない。

 

 

 

 

『雑なカテゴライズ』『雑なレッテル貼り』が原因の一つなのは間違いがない。

 

 

 

 

犯人は決まって

「彼らはいらない人間だから攻撃した」

と言うからだ。

 

 

 

 

ではどうすればいいのか?

 

そういう単純なカテゴリ・レッテルに縛られている人が、自分の頭の中で何を考えたって呪縛から抜け出ることは難しい。

 

 

 

 

ただ、例えばホームレスの人、何人かと話してみたら、すぐに考え方は変わると思う。

 

「自殺しようと思ったけど死にきれず、そのままホームレス生活を続けているおじさん」

 

「暴力団員で覚醒剤で刑務所に入ったが、出てきたら組がなくなっていてホームレスになった人」

 

「鳶職で腰を痛めてしまって、夫婦で上野公園に住み始めた人たち」

 

 

 

 

全員僕が話を聞いたホームレスの人たちだ。

 

 

 

 

みんなホームレス生活をしているのは同じだが、考えかたも、歩んできた道も、これから進む道も、全然違う。

 

 

 

 

そうやって、話を聞いた後にはなかなか、

 

「ホームレスの命はどうでもいい。どっちかというとホームレスっていないほうがよくない? 正直邪魔だしさ」

 

とは言えなくなると思うのだが。

 

 

 

 

どうだろうか?

 

 

※あいである広場(https://ai-deal.jp/)からの転載記事です。

文 村田らむ