就労移行支援と就労継続支援A型・B型の違いとは?就労支援事業所の特徴

福祉サービスを利用したい方

障害者就業をサポートする就労支援事業所には、就労移行支援事業所就労継続支援A型・B型事業所があります。

それぞれの障害者福祉施設でのサービス内容や利用対象者などは異なるため、特徴を把握しておきましょう。

この記事では、就労移行支援事業所と就労継続支援A型・B型事業所の特徴、メリット・デメリット、就労支援事業所一例をご紹介します。

 

就労支援事業所とは

就労支援事業所は、障害のある方の就労サポートを行う場所です。

障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスのひとつで、「就労移行支援事業所」と「就労継続支援事業所」があります。

 

就労移行支援事業所の特徴

ステップを上がる

就労移行支援事業所のサービス内容、利用対象者、メリット・デメリットを詳しく解説します。

サービス内容

就労移行支援事業所には、基本的に以下のような業務にあたるスタッフがいます。

  • 管理者・・・スタッフ管理・事業運営
  • サービス管理責任者・・・個別支援計画作成、他スタッフの指導
  • 就労支援員・・・就活の支援、職場定着支援
  • 生活支援員・・・日常生活の支援
  • 職業支援員・・・就労機会提供、実習先開拓

このようにそれぞれのスタッフが、一般企業への就職を希望する障害のある方に対して職業訓練や就職支援などのサポートを行います。

就労移行支援事業所の利用期間は原則2年以内で、賃金(工賃)は支給されません。

利用対象者

就労移行支援事業所を利用できるのは、以下のような方です。

  • 身体障害者、精神障害者、知的障害者、発達障害者、難病のある方
  • 18歳以上65歳未満の方
  • 一般企業への就職を希望している方

就労移行支援は、障害者手帳をお持ちでない方でも医師や自治体の判断によって利用可能です。ただし、障害福祉サービス受給者証が必要になります。申請方法や利用開始までの流れは事業所のある自治体の障害福祉課や利用を希望する就労移行支援事業所などに確認しましょう。

メリット

就労移行支援事業所を利用するメリットをご紹介します。

健康管理力が身につく

就労移行支援事業所では、体調管理の指導や日常生活上の相談などを行います。

健康管理力が身につくことで、一般企業への就職を目指しやすくなります。

職場での障害への対応力を得られる

就労移行支援事業所では利用者の障害を考慮し、業務面での対処法などもサポートしてくれます。

自分の障害への対応力を身につけることで、仕事に取り組みやすくなります。

自分の強み、弱みを知れる

さまざまな支援や訓練を受けることは、自分の強み、弱みを知るきっかけになります。採用担当者へのアピールポイントが把握でき、自分に必要な配慮を説明しやすくなるのもメリットです。

望む就労を目指すプランをスタッフが立ててくれる

就労移行支援事業所では、利用者の希望に合った就労を目指すプランを立ててくれます。

プランに沿ってそれぞれのスタッフが就職活動や日常生活上の支援をしてくれるため、望む就職を計画的に目指せます。

コミュニケーション力が身につく

就労移行支援事業所では、他の利用者と一緒に訓練などを行います。そのため他者とのコミュニケーション力が身につきやすく、就職後の人間関係にも活かせます。

研修やトレーニングを受けられる

就労移行支援事業所では、さまざまな研修やトレーニングを受けることができます。

【例】

  • 対人技能トレーニング
  • ストレスコントロール
  • ビジネスマナー講習
  • パソコン講座
  • 作業訓練

就職だけではなく継続を目指すサポートも受けられる

就労支援事業所の利用を経て就労すると、「就労定着支援」という障害福祉サービスも受けられます。

就労後の生活や仕事での悩み事の解決、職場への訪問など、職場定着のための支援をしてくれます。

 

デメリット

就労移行支援事業所のデメリットは以下です。

就職支援メニューなどが合わない可能性がある

それぞれの事業所でサポート内容が異なるため、実施している職業訓練や就職支援メニューが希望に合わない可能性があります。

また、障害者枠での就職を目指す事業所が多いため、一般枠希望の方には支援内容が物足りないということがあるかもしれません。

利用料が必要なケースがある

就労移行支援事業所の利用料は1割負担で、前年の世帯収入状況によって負担上限月額が決まっています。低料金で利用している方が多いです。

短期間でも就労できない

基本的に短期間でもアルバイトをすると雇用されたことになるので、就労支援を受けられなくなります

ただし、自治体および利用している就労移行支援事業所の判断によっては、アルバイトが許可される場合もあります。

ハローワークなどの利用が必要

就労移行支援事業所は直接の求人紹介は行えません。そのため、ハローワークや障害者職業センターなどと連携して職場探しのサポートをする形になります。

ですが、事業所独自のルートでの企業見学や座談会などを通して、就職が決まるケースもあります。

 

就労継続支援事業所の特徴

ここでは就労継続支援事業所について、就労移行支援事業所との違い、メリット・デメリットをご紹介します。

就労移行支援事業所との違い

就労継続支援事業所は、一般企業への就職が困難な方や、就労移行支援を利用しても就職につながらなかった方が利用可能な障害福祉サービスです。

職業訓練・生産活動などを行うことができる支援を受けられます。

就労移行支援事業所と異なり、就労継続支援事業所には利用期間の制限はありません

また、就労継続支援事業所は働く場であるため、賃金(工賃)が発生するのも特徴です。

サービスを利用するには、就労移行支援と同様に障害福祉サービス受給者証が必要になります。

就労継続支援A型とB型の違い

就労継続支援事業所には、A型とB型があります。

身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病といった障害のある方が対象というのは共通ですが、以下の通り違いがあります。

A型 B型
対象者 一般企業での就労が困難な方

原則18歳以上65歳未満の方

※65歳以上でも所定の要件を満たせば利用可

一般企業・A型事業所での就労が困難な方

年齢制限なし

雇用契約 あり なし
賃金(工賃) 賃金あり 作業工賃あり
平均月収 76,887円※1 16,118円※1

※1の出典:障害者の就労支援対策の状況https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/shurou.html

就労継続支援A型のメリット

就労継続支援A型のメリットは以下になります。

収入が最低賃金以上になるケースがある

A型は利用者と事業所が雇用契約を結んで働くため、原則最低賃金以上の給料が保障されます。働き方によっては、収入を増やすことが可能です。

無理をせず働ける

就労継続支援事業所では、サービス管理責任者生活支援員職業指導員といったスタッフのサポートを受けられるので、無理をせずに働けます。

一般就労に似た経験が積める

基本的に一般就労とほぼ変わらない環境で働けます。働きながら知識や技術を身につけた後に、一般就労を目指して就労移行支援事業所の利用に切り替えるというパターンも可能です。

労働関連の法律が適用される

A型は雇用契約を結ぶため、労働基準法や最低賃金法など労働関連の法律が適用されます。社会保険や雇用保険への加入も可能です。

A型のデメリット

A型にはデメリットもあります。下記を把握した上で利用を検討しましょう。

事業所の良し悪しに差がある

事業所によってサービス内容は異なり、良し悪しにも差があります。

事業所を選ぶ際は、見学や体験を受け付けている場合もあるので、実施している支援メニューの確認だけでなく、事業所の雰囲気、支援員の様子などもチェックしておきましょう。

事業者の経営能力が問われる

事業者の経営能力や営業力が低いと、利用者に給料を払い続けることができなくなってしまいます。

事業所が倒産した場合は、突然働く場所がなくなる可能性があります。

短時間労働を強制されるケースがある

A型の実働時間は1日4~8時間程度であることが一般的です。しかし、悪質な事業所や経営状態の良くない事業所を利用してしまうと、利用者の意思に関わらず短時間労働を強制される場合があります。

キャリアアップが難しい職場がある

経営の知識や経験がなく十分な設備投資をしていない事業所では、利用者それぞれに合った就労が提供できない場合があります。

単純作業ばかりの職場では、キャリアアップが難しいでしょう。

囲い込みされてしまうケースがある

事業所は利用者の希望に合わせて、一般就労へ移るための支援を行います。しかし、事業所の生産性を保つために、スキルのある人の囲い込みをしてしまうケースがあります。

補助金目的の事業所がある

A型事業所には、自立支援給付費などの補助金が国より支給されます。

補助金目的で、利用者に十分なサービスを提供しない、短時間労働を強要するといった悪質な事業者もいるので注意が必要です。

 

B型のメリット

次にB型のメリットを見ていきましょう。

重度の障害でも働ける可能性がある

B型は、障害の程度や年齢、体力などの理由で、一定の日数・労働時間での勤務ができず、一般企業や就労継続支援A型などで雇用契約を結んで働くのが難しい方も利用可能です。体調に合わせて1日1時間だけという勤務もできる場合があります。

年齢制限がない

B型は年齢制限がありません。一般企業での就労は年齢的にも体力的にも目指せないながら、少しでも働きたいという高齢の方でも利用できます。

福祉の経験が長いスタッフが多い

B型では福祉の経験が長いスタッフがサポートしている場合が多いため、障害、体力に不安がある方も安心です。

アットホームな雰囲気

アットホームな雰囲気の事業所が多く、気持ち的な負担が少ない状態で自分のペースで働けます。

利用者の能力に合った仕事ができる

B型の場合、利用者それぞれの障害や日々の体調を考慮した仕事を確保・提供するので、心身ともに無理のない働き方ができます。

B型のデメリット

B型のデメリットについても見ていきましょう。

工賃が低い

B型事業所は雇用契約を結ばないこともあり、短時間から働けるなど自由度のある点がメリットではありますが、A型と比較しても工賃が圧倒的に低いです。

出来高の場合もある

固定給で支払う事業所もありますが、作業量に応じた出来高制である場合も多いです。作業量が少ないとより収入が減ってしまいます

安定的に仕事がないケースもある

積極的に営業をかけない事業所では受注量が少なく安定的に仕事ができないケースもあります。

単純作業が多い

B型の作業内容は、農作業や部品の加工、清掃、お菓子作りなどさまざまです。

しかし、単純作業が多い場合がほとんどで、キャリアアップが難しいケースが多々あります。

労働関連の法律が適用されない

B型は雇用契約を結ばないため労働関連の法律が適用されません。そのため、最低賃金の保証もありません

 

就労支援事業所一例

就職した人

全国の就労支援事業所の一例をご紹介します。

【北海道札幌市】札幌チャレンジド

パソコンスキルの向上を目指すPC講座や、日商PC検定などの受験に備える学習のサポートが受けられる就労移行支援事業所です。

安心して人と交流することの心地よさを知り、コミュニケーションの楽しさを知ることができる講習もあります。

見学~4日間程度の体験が可能なので、雰囲気などを確認したうえで検討できます。

住所:北海道札幌市北区北7条西6丁目1 北苑ビル2F
電話:011-769-0843
http://s-challenged.jp/?page_id=180

【東京都渋谷区】ジョブクリエイト渋谷

OfficeやIllustratorなどのデザイン系のスキルアップ、資格取得などを支援してくれる就労移行支援事業所です。

さまざまな就労経験や専門知識を持つスタッフがサポートします。

住所:東京都渋谷区幡ヶ谷3-20-2 TSビル301
電話:03-6383-3455
https://www.jobcreateshibuya.com/

【神奈川県川崎市】ダンウェイ

就労移行支援・就労継続支援B型・自立訓練(生活訓練)事業などを行っている事業所です。事務系、軽作業系、クリエイティブ系などさまざまな訓練があり、外部実習も受けられます。見学、面談後、3日間の体験実習が可能です。

住所:神奈川県川崎市中原区新城1丁目12番15号
電話:044-740-8837
https://www.danway.co.jp/works02.html

【愛知県名古屋市】あいち就労支援センター

公認心理師による専門的な心理検査などを用いて、職業適性診断を行っている就労移行支援事業所です。障害特性に応じた小集団療法や作業訓練、職業カウンセリングなどを受けられます。

住所:愛知県名古屋市東区東桜2丁目14-7CBT名古屋ビル3・4F
電話:052-938-7813
https://cbt-career.work/

【大阪府大阪市】ディーキャリア 天王寺オフィス

大人の発達障害の特性に合わせたプログラムがある就労移行支援事業所です。
臨床心理士などの専門スタッフが、自身の特性の理解、コミュニケーション能力の向上などのサポートをしてくれます。

住所:大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋3-10-1 あべのベルタ6F 6001-2号室
電話:06-6634-2526
https://dd-career.com/office_data/tennoji/

【高知県高知市】えだは

利用者の希望やスキルに合わせた訓練や就職サポートを提供する就労移行支援事業所です。VR技術を用いた発達障害支援プログラムも実施しています。

住所:高知県高知市大津乙1024番地3
電話:088-866-0240
https://240-job.org/

【福岡県福岡市】ゆたかカレッジ福岡キャンパス

4年間かけて福祉と教育の支援を受けられる、自立訓練事業所と就労移行支援事業所が合わさった多機能型事業所で、東京や神奈川などにも拠点がいくつかあります。
前半の2年間は自立訓練となる教養課程、後半の2年間は就労移行支援となる専門課程を受けられます。

住所:福岡県福岡市博多区吉塚1-38-32-1F
電話:092-611-2225
https://yutaka-college.com/college/fukuoka/

【長崎県佐世保市】MINATOMACHI FACTORY

デザインから梱包まで、ポーチなどの雑貨制作に関われる就労継続支援B型事業所です。得意なこと、好きなことを活かせる仕事を担当できます。
一般企業への就労を目指す方は、パソコン操作やビジネスマナーを学ぶことも可能。就職活動のサポートも受けられます。

住所:長崎県佐世保市本島町4番26号ライナービル401
電話:0956-23-7565
https://www.for-all-product.com/minatomachi-factory

【沖縄県那覇市】サンクスラボ・那覇オフィス

母体がIT企業の就労継続支援A型事業所です。ネットゲーム内での接客、ネットサービスの動作テスト、ブログ作成など、IT分野に興味のある方にぴったりな業務に携われます。
沖縄県内にほかにもいくつか拠点があります。

住所:沖縄県那覇市久米2丁目3-14 セゾン久米ビル5階
電話/FAX 098-860-7611
https://thankslab.biz/index.php/support/type-a/

 

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障害のある方が就職活動や就労のためのサポートを受けられる就労支援事業所

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