発達障害・知的障害の特徴とは?障害児の親御さんができる対応例と相談先

福祉の仕事をしたい方コラム

発達障害の特徴として、落ち着きがなかったり注意不足なことが多かったりします。また、知的障害の特徴としては、読み書きの習得が困難だったり物忘れが多いといったことが挙げられます。

このような特徴が見られ、お子さんの発達に不安を感じた時、 どこに相談すればよいのか悩む親御さんは多いです。

お子さんの学校生活や社会生活をよりスムーズにするためには、 それぞれの障害特性に合わせた適切な対応が必要となります。

この記事では、発達障害や知的障害の特徴や障害児の親御さんができる対応例、 適切な相談先について解説していきます。

また、発達障害/知的障害をもつ親御さんの特徴についても紹介しています。

障害児とは

障害児とは、18歳未満の身体障害・知的障害・精神障害・発達障害がある方、あるいは障害の程度が難病を患っている方と同程度という方の総称です。

障害のある子ども達はさまざまな福祉サービスを受けることが可能ですが、適切な支援を受けるためには家族と専門機関、学校などの連携が重要です。

 

発達障害の特徴と親の対応

元気な少女

近年「発達障害」という言葉を耳にする機会は増えてきましたが、この障害についてはまだ誤解も多く存在しています

まずは、発達障害の特徴と、養育者である親御さんができる対応について見ていきましょう。

発達障害の診断は下りないもののその傾向がある、いわゆるグレーゾーンのお子さんに対しての対応策にもなるはずです。

 

発達障害は親のしつけによって起こるものではない

まずはじめに知ってほしいのは、発達障害は親のしつけによって起こるものではないということです。

発達障害の場合、生まれつきの脳の働きの障害によって、多動や対人関係の困難などといった症状が出ます。

あくまで脳機能の障害であり、親のしつけなどは全く関係ありません。

自分のせいでは?と親御さんが気に病むことはないのです。

サポートを何も受けないままでは、対人関係や社会性に深刻な問題が出る可能性があります。ですが、本人の症状や特性に合った適切な療育が受けられれば、症状の改善や将来的な自立も期待できるでしょう。

発達障害は大きく分けて「ASD」「ADHD」「LD」の3種類です。

それぞれの特徴を見ていきましょう。

 

ASD

ASDとは、自閉スペクトラム症自閉症スペクトラム障害と呼ばれるものです。

以前は「自閉症」「広汎性発達障害」「アスペルガー症候群」などと区別されていましたが、今では境目なく「自閉症スペクトラム障害」という診断名で呼ばれることが多くなりました。

 

基本的な特徴

ASDの場合、以下のような基本的な特徴が現れます。

  • 順番や物の配置など、特定の物事に強いこだわりがある
  • 手先が不器用
  • 他人の気持ちを読み取るのが苦手
  • 感覚が鋭くニオイや音に過敏に反応する(感覚過敏)、または逆に鈍い

これらの特徴は大人のASDの方にもしばしばみられますが、こうした行動特性には個人差があります。

就学前のお子さんの場合、周囲の子と比べて集団行動が極端に苦手だったり、同年代の子と上手く遊べなかったりということから、周囲の大人がASDに気づくことも多いです。

また、道順やおもちゃの位置にこだわりがある、同じ遊びをくりかえすといった行動もASDの児童によくみられる特徴です。

 

状況別・親御さんの対応例

ASDのお子さんの場合、曖昧な状況への対応が苦手という特徴があります。

しかし、親御さんがサポートすることで生活面での困りごとを軽減させることが可能です。

 

  • 言葉だけの説明が理解できない

ASDのお子さんは曖昧な指示を理解するのが難しいです。

何か説明する場合は一気に伝えようとせず、一つひとつ具体的に指示を出すようにしましょう。

例えば「その辺を片づける」というあいまいな指示ではなく、「本を本棚に戻す」「おもちゃをおもちゃ箱に入れる」という風に、具体的な内容をひとつずつ伝えるのが有効です。

言葉で上手く伝えられない場合は、絵などを使って視覚に訴えるのも良いでしょう。

 

  • 他人の気持ちが読み取れない

ADSの場合、表情やジェスチャーだけでは相手の気持ちを読み取ることが難しいです。

この特性による周囲とのトラブルを避けるためにも、集団行動でのルールやしてはいけないことをわかりやすく伝えておきましょう。

親御さんは表情のみではなく、言葉やしぐさでも伝えるように心がけましょう

 

  • ニオイや音に過敏に反応する

感覚過敏のあるお子さんの場合、音や光などによる強い刺激を感じるようなにぎやかな場所や空間ではパニックになる可能性があります

普段からリラックスできるよう、家では静かで落ち着いた環境を用意してあげましょう。

また、外ではイヤーマフや耳栓、フードなどを活用して周囲からの刺激を軽減する工夫も必要です。

 

ADHD

ADHDは、「注意欠如・多動症」あるいは「注意欠如・多動性障害」とも呼ばれます。

落ち着きがないなどの特性があるため性格やしつけの問題と思われがちですが、実際は脳の機能障害であり、適切な対応によって改善するケースがほとんどです。

 

基本的な特徴

ADHDの基本的な特徴は以下のとおりです。

  • 不注意が目立ち、忘れ物やケアレスミスが多い
  • じっとしていることが苦手で、常に手足を動かしたり騒いだりしてしまう
  • 思ったことをすぐ行動に移してしまう衝動性がある

幼少期はADHDのような特性があっても、性格や子供ゆえの衝動性とされて見逃されることも少なくありません

しかし、小学生になると授業中椅子に座ってじっとしていられない、順番が守れない、空気を読まず発言してしまうなどの行動が目立ってきます。

女の子の場合は多動性はあまりなく、幼少期は障害が見逃されることも多いです。

しかし思春期以降になると、部屋が片づけられない、無遠慮さが目立ち友人ができづらい、出かけるまでの準備に時間がかかるといった特徴が目立つようになってきます。

 

治療法は療育と薬物治療

ADHDは療育と薬物療法が効果的な治療方法として採用されています。

療育では気が散らないよう環境を整え、ソーシャルスキルトレーニング(SST)を行うことで社会への順応を目指します。

また、必要があれば集中力を上げる・衝動を抑制する等の効果がある薬を使った、薬物療法が行われることもあります。

ただし、薬物療法には副作用や相性の問題もあるため、必ず専門医の指導の下で使用することが大切です。

 

親御さんはペアレントトレーニングを

ADHDをはじめとした発達障害の治療法のひとつとして「ペアレントトレーニング」があります。

ペアレントトレーニングとは、親御さんが発達障害のお子さんとの接し方や子育ての方法を学ぶことで、より良い家庭環境を作ることを目的としたものです。

ペアレントトレーニングを受けることは、お子さんだけでなくお父さん・お母さんにかかるプレッシャーを軽減することにもつながるでしょう。

こうしたトレーニングは児童発達支援・放課後等デイサービスなどで学ぶことが可能です。

 

以下も参考にどうぞ
ペアレント・トレーニング実践ガイドブック

 

LD

LDとは知的遅れを伴わない学習障害のことです。

他は問題なく、特定の分野だけ著しく苦手な場合は学習障害が隠れている可能性があります。

 

障害の種類は3種

LDは主に以下の3種に分類されます。

 

  • ディスレクシア(読字障害)

ディスレクシアとは「字を読むこと」が難しい障害です。

文字の読み方や形を認識することが困難なため、音読が苦手で読み間違いも多いです。

また、読むだけで疲れてしまい文章を理解するまでいかない、文字を一字ずつたどって読む「たどり」読みになるといった特徴もあります。

 

  • ディスグラフィア(書字表出障害・書字障害)

ディスグラフィアは「字を書くこと」が難しい障害です。

視覚情報の処理が苦手なため、漢字や文字の形を認識することが困難です。

そのため、漢字の部首を間違う、文字を思い出すまでに時間がかかる、書き取りが苦手といった特徴があるため、国語の成績だけ極端に悪くなりがちです。

 

  • ディスカリキュリア(算数障害)

ディスカリキュリアとは、算数や計算、推論といったことが困難な障害です。

繰り上がりや繰り下がりが理解できない、九九が計算として応用できないといった特徴があるため、低学年の算数からつまづいてしまいます

また、数を概念として捉えることができないため文章問題や応用問題も苦手です。

 

親御さんができる勉強を教えるときの工夫

何らかの脳機能障害が原因であるとされているLDは、残念ながら完全に改善することはできません

とはいえ、学習の方法を工夫することで親御さんがサポートすることは可能です。

例えば、ディスレクシアの場合は定規などを当てながら「読む場所」に注目させる、文章のまとまりごとにスラッシュをいれるなどの工夫することで読み方が改善することがあります。

いずれにせよ、その子の発達や特性に応じて工夫しながら教えることが大切です。

また、タブレット学習や計算機といったサポート教材の活用もLDをもつお子さんの学習には有効です。

 

発達障害のグレーゾーンとは?

グレーゾーン」とは、発達障害の特性を持つものの、診断基準を満たさない状態を指します。このため、周囲から理解や支援を得にくく、グレーゾーンならではの悩みを抱えることがあります。近年では、発達障害の診断がなくても利用可能な支援も増えており、早期に療育を始めるケースが注目されています。適切な環境で学ぶことにより、子どもは必要なスキルを獲得しやすくなると同時に、抑うつなどの二次的な問題を防ぐ効果も期待されています。

 

発達障害のグレーゾーンについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

発達障害のグレーゾーンの特徴は?仕事上の問題点と向いている職種、相談先

 

知的障害の特徴と親の対応

知的障害とは、読み書きなどの学習能力や論理的思考、コミュニケーション能力や行動管理といった知的機能や適応機能に制約がみられる障害です。

知的障害の具体的な特徴をみていきましょう。

 

知的障害の原因は

知的障害の主な原因は以下の3つに分類されます。

 

突発的要因・生理的要因

基礎疾患がない状態で、知的障害が生じている場合は突発的要因生理的要因に分類されます。

このケースは妊娠・出産時にもトラブルはありません。たまたま障害を持って生まれてきます。知的障害の原因として最も多いとされています。

 

先天的要因

先天性の代謝異常や染色体異常、出産前後の感染症といった先天的な要因によって知的障害が起こるケースです。

 

後天的要因

重篤な外傷や感染症など、出生後の要因によって知的障害が生じるケースです。

また、病気やけが以外でも、乳幼児期の極端な栄養不足や人との交流がほとんどないような不適切な環境要因が知能に影響する場合もあります。

 

遺伝する可能性はある?

知的障害の原因はさまざまであり、前述のように遺伝が原因でないケースもあります。

まれに原因となる遺伝性の疾患(脆弱X症候群などの単一遺伝疾患等)が親から子へ受け継がれ、知的障害が発症することはあります。

とはいえ、必ずしも知的障害の素因が子供に受け継がれるとは限らず、仮に引き継いでも症状が出るとは限りません。

 

程度別の特徴

知的障害は障害の程度によって4段階に分類されています。

程度 日常生活 学習面
軽度 ある程度こなせる 年齢相応には難しい
中等度 発達の遅れが目立つ ごく簡単な読み書きは可能
重度 サポートが必要 初期段階の学習面の遅れ
最高重度 手厚いサポートが必要 著しい発達の遅れ

 

軽度

軽度の場合、日常生活においてある程度こなせることもあります

ただし、読み書きや計算・時間の概念などは年齢相応に処理することが難しいため、サポートが必要です。

コミュニケーション能力や感情のコントロールも、同年齢よりは未熟です。

 

中等度

中等度の場合、幼児期から発達の遅れが目立つようになります。

ごく簡単な読み書きはできるものの、就学後の学習についていくことは困難です。

 

重度

重度の場合、発達の初期段階より運動面・言語面での遅れが見られます。

単純な会話は可能ですが、日常生活ではサポートを必要とする場面が多いでしょう。

 

最重度

最重度の場合は、運動・言語両面での著しい発達の遅れが見られるのが特徴です。

身体障害やてんかん発作などを伴うこともあり、生活全般に手厚いサポートが必要です。

 

親御さんの対応例

知的障害のお子さんは、生活面のさまざまな部分で困難を感じることが多いです。

しかし、親御さんや周囲の支援者、先生が適切な対応を知り、実行することで、お子さんのより良い社会生活をサポートすることができるでしょう。

サポートするにあたって押さえておきたいポイントは以下の通りです。

  • 本人の気持ちを優先したサポートを目指す
  • 指示は具体的かつわかりやすくする
  • ルールやきまりごとは事前に説明しておく
  • 不安にならないよう、急な環境の変化は避ける
  • 保育園・幼稚園や学校の先生方に障害の特徴や配慮してほしいことを伝える

 

発達障害をもつ子どもと親への公的なサポート

発達障害をもつ子どもと親が利用できるサポートは以下の通りです。

 

障害者手帳

障害者手帳を取得すると、障害の内容や程度に応じた福祉サービスを利用できます。発達障害は精神障害者保健福祉手帳の対象なので、知的障害が伴う場合には療育手帳も対象となります。手帳の申請には医師の診断書が必要で、障害の程度や取得の可否が審査されます。

 

障害福祉サービス

児童発達支援や放課後等デイサービスに加え、医療型児童発達支援や保育所等訪問支援などの障害児通所支援が利用可能です。また、障害児入所支援や生活や外出をサポートする自立支援給付など、多様な障害福祉サービスも提供されています。

障害のある子どもを持つ方のための相談サービス・相談先

親子で相談

お子さんに発達障害や知的障害の疑いが見られたら、自分自身でなんとかしようと思わず、できるだけ早期に専門機関へ相談することが大切です。

適切なサポートを受けるためにも、お住まいの自治体の児童相談所や支援センターなどに設置された相談窓口にまずはお話することをおすすめします。

付録8 障害に関する相談窓口|平成30年版障害者白書(全体版) – 内閣府

 

児童相談所

児童相談所は18歳未満の子供に関するあらゆる相談を受け付けています

発達の遅れや障害に関する相談にも、医師や保健師といった専門知識を持つ専門家が対応します。

療育手帳の交付や医療費助成などに関する相談も可能です。

児童相談所とは 東京都福祉保健局

 

保健所

保健所は福祉施設や医療機関と連携し、障害児が適切なサービス・支援を受けられるようサポートします。

障害者支援に関わる 保健所の役割

 

発達障害者支援センター

各自治体には社会福祉法人や特定非営利活動法人等が運営する「発達障害者支援センター」が存在します。

他関係機関との連携しながら、障害児の発達支援や療育への具体的なアドバイス、支援を行います。

国立障害者リハビリテーションセンター発達障害情報・支援センター相談窓口

 

教育委員会

教育委員会では、障害児の状態や特性に応じた教育の支援・就学先の決定を行います。

障害のある子供の就学先決定について:文部科学省

 

障害児相談支援

障害児が放課後デイサービス等の障害児通所支援を利用する際、支援利用計画書の作成や、利用開始後のモニタリングなどを行います。

市町村に申請し利用が決定したら、サービスを受けることができます。

障害児相談支援 子ども・家庭

 

発達障がい、知的障がいのある方の自立をサポートする「わおん」

発達障がいや知的障がいのあるお子さんを持つ親御さんは、自分たちが元気なうちはいいけれど、高齢になり、サポートが難しくなったときにどうすればいいのか、不安を抱えているはずです。

障害者グループホームは、自立を目指す障害のある方の受け皿として、全国に増えている施設です。

地域にある一軒家やアパート、マンションで、スタッフのサポートを受けながら共同生活を送ります。

発達障がいや知的障がいのある方も多く利用しています。

お子さんが将来、自立した生活ができるようにと、障害者グループホームの利用を検討する親御さんもいます。

障害者グループホーム「わおん」では、自立を目指す方やそれを願う親御さんをサポートするスタッフを募集しています。

「わおん」の多くの施設では保護犬・保護猫も一緒に暮らしており、スタッフの一員のごとく、利用者の方々の心を癒しています。

障害のある方をサポートする仕事がしたいという方は、アットホームな「わおん」で、働いてみませんか?