2013年の介護保険法施行規則改正により、「ホームヘルパー2級」は「介護職員初任者研修」に変更になりました。これから介護業界への入門的な資格を取得するという場合は、介護職員初任者研修のカリキュラムを受講することになります。
この記事ではホームヘルパー2級と介護職員初任者研修の違い、介護職員初任者研修の資格の取得方法、気になる給料について徹底解説します。
ホームヘルパー2級は介護職員初任者研修へ
「ホームヘルパー2級」は「介護職員初任者研修」に変わりました。変更になった理由や、それぞれの違いなどについて説明します。
介護職員初任者研修に変わったのはいつから?その理由は
2013年4月1日の介護保険法施行規則改正により、ホームヘルパー2級は「介護職員初任者研修」に変更となりました。背景には、介護職員のキャリアパスを明確化するという目的があります。介護職員が不足しているとはいえ、ただ単に介護職員を増員するだけでは介護サービスの質の低下が懸念されます。そのため、介護資格制度を見直して、複雑だった介護職のキャリアパスをわかりやすくし、優秀な介護職員のスムーズな育成を実現しようとしているのです。
ちなみに、ホームヘルパー2級と同様に、ホームヘルパー1級も実務者研修に変更となりました。それ以前には介護職員基礎研修という資格もありましたが、ホームヘルパー1級に一本化されています。
また、高齢化社会が進む中で、認知症患者が増加し、対応できる職員の確保が重要な課題と位置づけられたことも改正の理由として挙げられます。
ヘルパー2級と初任者研修の違い
介護職員初任者研修では、増加傾向にある認知症高齢者に対応するため、新たに認知症に関する科目が増設されています。ほか地域包括ケアシステムを築くために医療との連携を学ぶ科目も追加されました。
また、ホームヘルパー2級ではデイサービスや訪問介護などの介護施設での30時間・約5日間の実務実習がカリキュラムとして組まれていましたが、介護職員初任者研修では実務実習がなくなり、その分通学(スクーリング)の授業時間が増えています。とはいえ、一部のスクールでは任意で実務実習を取り入れているところもあります。
さらに、ホームヘルパー2級ではすべてのカリキュラムを修了すれば資格が取得できましたが、介護職員初任者研修の場合、カリキュラム修了後の試験に合格しないと、資格が取得できません。
介護職員初任者研修を取得し直す必要はある?
ホームヘルパー2級の資格を持っている場合、介護職員初任者研修を取得し直す必要はありません。ホームヘルパー2級と介護職員初任者研修は同等の資格と考えて差し支えないでしょう。
ただし、介護職員初任者研修では認知症に関するカリキュラムがあるため、ホームヘルパー2級をお持ちの方は、少し知識が足りないと感じる場面もあるかもしれません。そこは必要に応じて勉強するとして、実際の介護業務では大きな支障はないでしょう。
ヘルパー2級を履歴書に書くときは正式名称で
ホームヘルパー2級と介護職員初任者研修は資格としては同等の扱いとなるため、募集要項に「介護職員初任者研修修了者」と書かれている求人に、ホームヘルパー2級取得者も応募できます。
ただし、ホームヘルパー2級の取得者は履歴書に介護職員初任者研修修了とは書けません。では、「ホームヘルパー2級」と書けばいいかというと、それもNGです。ホームヘルパー2級は通称で、正式名称は「訪問介護員2級養成研修課程修了」なので、履歴書にはそのように書きましょう。
ヘルパー資格の再発行
ホームヘルパー2級の資格証明書を紛失してしまった場合は、研修カリキュラムを受けた福祉協議会や自治体、施設などで再発行ができます。必要な場合は、研修を修了した機関に問い合わせてください。自分が研修を修了した機関がすでになくなっている場合は、機関があった都道府県庁で再発行できます。各自治体の「介護保険担当課」に相談しましょう。
介護職員初任者研修(ヘルパー2級)の気になること
介護職員初任者研修の取得方法や条件など、気になる点をまとめました。
資格の取得方法・取得にかかる期間
介護職員初任者研修を取得するには、全部で130時間の講座受講が必須です。講座の受講は通学のみ、あるいは通学と通信による自己学習の併用で、このうち89.5時間以上は通学で受講しなくてはなりません。
短期間での資格取得を目指す場合、集中して学習すれば約1ヶ月で修了できます。ただし、この場合は時間確保がポイントになるため、平日の日中も資格取得のために時間を割けることが前提です。例として、週3~4日は通学にて講座を受講し、そのほかの時間は通信で自己学習を行うといった形になります。
フルタイムで働きながら資格取得を目指すなら、土日や夜間に通学することになります。この場合は、資格取得まで3~4ヶ月ほどかかると考えましょう。
資格取得の年齢制限はある?
基本的には受験資格に年齢制限はありません。スクールによっては、義務教育を受けている場合、16歳未満の場合は条件を設定していることがあるため、事前に確認しておきましょう。介護職員初任者研修を受ける世代は幅広く、60~70代の受講者もいます。
資格取得にかかる費用
スクールによって、資格取得にかかる費用は異なりますが、「カイゴジョブアカデミー」の場合、税抜・テキスト代込みで29,000円もしくは39,000円です。(校舎によって異なります。)条件が合い、特待生制度を利用できれば無料での受講が可能です。
また、教育訓練給付金制度を利用すればハローワークから受講料の20%が支給されます。
このように費用を抑えて資格取得ができる場合もあるので、調べてみることをおすすめします。あとは、通学のしやすさ、サポート体制など総合的に判断して研修実施機関を決めるようにしましょう。
資格取得の難易度
介護職員初任者研修は修了試験を実施します。正確な難易度は開示されていませんが、合格点は100点中70点で、授業の内容を理解していれば十分通過できるレベルです。仮に落ちてもほとんどの場合無料で再試を受けられるので、かけた時間と費用が無駄になることはないでしょう。
出題項目
介護職員初任者研修の出題項目は全10項目で、介護知識の理念にかかるすべての分野から出題されます。以下に、出題項目と科目をまとめました。
項目 | 科目 |
1.職務の理解 | 多様なサービスの理解 |
介護職の仕事内容や働く現場の理解 | |
2.介護における尊厳の保持・自立支援 | 人権と尊厳を支える介護 |
自立に向けた介護 | |
3.介護の基本 | 介護の役割、専門性と他職種との連携 |
介護職の職業倫理 | |
介護における安全の確保とリスクマネジメント | |
介護職の安全 | |
4.介護・福祉サービスの理解と医療との連携 | 障害者福祉制度 |
介護保険制度及びその他制度 | |
医療との連携とリハビリテーション | |
5.介護におけるコミュニケーション技術 | 介護におけるコミュニケーション |
介護におけるチームのコミュニケーション | |
6.障害の理解 | 障害の基礎的理解 |
障害の医学的側面 | |
家族の心理、かかわり支援の理解 | |
7.認知症・行動障害の理解 | 認知症を取り巻く環境 |
医学的側面から見た認知症の基礎と健康管理 | |
認知症に伴うこころとからだの変化と日常生活 | |
家族への支援 | |
行動障害の理解 | |
8.老化の理解 | 老化に伴うこころとからだの変化と日常 |
高齢者と健康 | |
9.こころとからだのしくみと生活支援技術 | 介護の基本的な考え方 |
介護に関するこころのしくみの基礎的理解 | |
介護に関するからだのしくみの基礎的理解 | |
生活と家事 | |
快適な居住環境整備と介護 | |
整容に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護 | |
移動・移乗に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護 | |
介護に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護 | |
入浴、清潔保持に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護 | |
排泄に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護 | |
睡眠に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護 | |
死にゆく人に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護 | |
10.振り返り | 振り返り |
就業への備えと研修修了後における継続的な研修 |
看護師資格があると修了者とみなされる
日本ホームヘルパー協会によると、看護師資格をお持ちの方は、介護職員初任者研修の修了者とみなされます。介護事業に携わるための証明書は、看護師免許でもって代えることができます。ただし都道府県の判断によるものなので自治体に確認しましょう。
通信講座ユーキャンで資格は取れる?
介護職員初任者研修の場合、通学による講座受講が89.5時間以上必要なため、通信講座であるユーキャンでは資格を取得することはできません。
ですが、ユーキャンは介護福祉士講座の取り扱いはあるため、介護福祉士資格の取得を目指す際は試験対策に利用すると良いでしょう。
介護職員初任者研修の就職先
介護職員初任者研修を取得した人の主な就職先は以下になります。
- 訪問介護(要支援・要介護認定の高齢者の自宅を訪問介護員が訪問し、生活援助や身体介護を行う)
- デイサービス(要支援・要介護認定の高齢者が日中に介護サービスを受ける通所介護)
- 特別養護老人ホーム(原則要介護度3以上と認定された高齢者が24時間体制の介護サービスを受けながら生活する施設。介護職員は生活のあらゆる介助を行う)
介護職員初任者研修(ヘルパー2級)の給料
介護職員初任者研修の資格取得は、介護職として長く働く際のキャリアパスを考えるうえでも重要です。気になる給与をみてみましょう。
月収は30万円超え
厚生労働省が定期的に実施している「介護従事者処遇状況等調査」によると、令和2年2月の調査結果では、介護職員処遇改善加算を取得している施設における介護職員全体(介護福祉士、介護福祉士実務者研修、無資格者も含む)の平均給与月額(基本給+手当+一時金)は315,850円です。
資格別にみると、介護職員初任者研修の平均給与月額(基本給+手当+一時金)は301,210円で、30万円を超えます。無資格の場合は275,920円のため、資格保持者の方が給与額が上がることがわかります。
下記21ページ参照
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/20/dl/r02gaiyou.pdf
三大資格の中で介護職員初任者研修の給料は一番安い
介護職員として働く際の資格には、介護職員初任者研修のほか、上位資格に当たる実務者研修、国家資格である介護福祉士があります。キャリアパスの位置づけでは、介護に従事する入門資格が介護職員初任者研修であり、その後実務者研修、介護福祉士とステップアップしていきます。
この三大資格のなかで、介護職員初任者研修の給与は一番低いです。しかし、介護実務経験を重ね、介護技術を習得しつつ、上位資格を取得していけば、実務者研修修了者、介護福祉士とキャリアアップできます。(介護福祉士の上位資格として民間資格の「認定介護福祉士」があります)
介護職員初任者研修資格取得者でも求人は多いため、歳を重ねても十分活躍できますが、仕事の幅を広げ、給料アップも目指すなら、上位資格の取得を目標にしましょう。
福祉業界で働くなら、障害者グループホームにも注目!
介護福祉業界でグループホームというと、認知症高齢者グループホームが思い浮かぶかもしれませんが、障害者グループホームの需要も高まっているのをご存じでしょうか。
障害者グループホームの利用者は障害が軽度な方が中心です。入居者も少人数なので、これから職務経験を積んでいくという方でも比較的働きやすい職場が多い傾向にあります。
介護職員初任者研修の資格を持っていると、障害者グループホームの採用でも優遇される場合が多いので、就職先の選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
中には障害のある方と保護犬・保護猫が一緒に暮らす、ペット共生型障害者グループホーム「わおん」というのもあります。
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