重度知的障害の特徴|知的障害の基準や兆候、大人利用可のサービス・施設

福祉の仕事をしたい方コラム

発達障害の一種である「知的障害(精神遅滞)」は、18歳頃までの発達期に知的能力と適応能力の双方に問題があり、日常生活に支障が出る状態のことです。

知的障害と判断される基準や兆候とはどのようなものなのでしょうか。

この記事では、知的障害がわかる時期や重度知的障害の特徴、大人の知的障害者が利用できる制度など、知的障害に関する情報を詳しく紹介します。

 

知的障害はいつわかる?

知的障害があることは何歳頃からわかるのでしょうか。

知的障害がわかる時期の目安や判断基準、兆候について紹介します。

 

わかるのは小学生になってからが多い、もしくは健診

知的障害は幼い頃から兆候がみられることがあります。

しかし、知的障害の診断では成長過程の発達基準との差をみるため、基本的に0歳の頃は判断できません

子供によって判明する時期は異なりますが、小学生になってからわかる場合が多いです。もしくは1歳半健診、3歳児健診、5歳児または就学前健診でわかることもあります。

検診時の判断基準を説明していきましょう。

 

1歳半健診での判断基準

1歳半頃になると興味があるものを指差したり、「マンマ」「ワンワン」など意味のある言葉を発したりするようになるのが一般的です。

1歳半健診では、以下のような言動をチェックして知的発達の状態を判断します。

  • 意味のある言葉を2語以上話すか
  • 物の名前を理解して指差しできるか
  • 自分の名前に反応して振り向くか
  • 「おもちゃ持ってきて」などの指示に応えるか

 

3歳児検診での判断基準

3歳は簡単な日常会話ができるようになり、社会性や記憶力、集中力なども身についてくる頃です。

3歳半健診では、以下のような言動をチェックして知的発達の状態を判断します。

  • 自分の年齢・氏名をきちんと伝えられるか
  • 「ママ、ごはん」など二語文を話すか
  • 頻繁に質問をするか

 

5歳児または就学前健診での判断基準

5歳を迎えた頃の子供は言語能力や理解力、記憶力、コミュニケーション能力などが高まり、できることが多くなります。

5歳児健診や就学前健診では、以下のような言動をチェックして知的発達の状態を判断します。

  • じゃんけんなど遊びのルールを理解できているか
  • 数を数えられるか
  • 「大きい・小さい」の比較ができるか

 

赤ちゃんのときの兆候

0歳の赤ちゃんに対して知的障害の診断をするのは難しいですが、以下のような行動がある場合は知的障害が疑われれることがあります。

  • 泣き止まない、またはあまり泣かない
  • 離乳食を嫌がって食べない
  • 目を合わせない
  • 物事に関心がない
  • 抱っこを嫌がる

 

1~3歳で見られる兆候

知的障害がある場合、1~3歳で見られる兆候には以下のようなものがあります。

  • 友達と喧嘩ばかりする・一緒に遊ばない
  • 言葉が遅い
  • 気に入ったおもちゃでしか遊ばない
  • 思い通りにならないとパニックや癇癪(かんしゃく)を起こす

これらの兆候がある場合は、早いうちに地域療育センターなどに相談してみましょう。

 

知的障害者の寿命は短い?

知的障害者の寿命は短いといわれていますが、日本では障害者の寿命に関する調査は行われていません。ですが、推測は可能です。

2019年に発表された厚生労働省の資料を参考に、身体障害者・知的障害者・精神障害者の65歳未満・65歳以上の割合を見てみましょう。

障害福祉施策の動向について

出典:厚生労働省「障害福祉施策の動向について」

このデータによると、知的障害者は身体障害者や精神障害者と比べて65歳以上の割合が低くなっています。

【障害別・65歳以上の割合】

  • 身体障害者:74%
  • 知的障害者:16%
  • 精神障害者:39%

データは複数の障害のある方の重複も含むざっくりとした推計なので明確にはいえませんが、知的障害者は寿命が短いと推測することはできるでしょう。

 

短くなる理由

もともと知的能力が低い知的障害者は一般の高齢者よりも認知機能の低下が早く、身体機能が落ちるのも早い傾向にあるようです。

このように早い段階で老化の影響が出ると、生活に支障が出やすくなり、リスクも増えると考えられます。

日常生活や社会生活に適応できないストレスから、精神疾患を患うケースもあります。

事故や病気のリスクも高まることから、一般の高齢者よりも寿命が短くなる可能性があるといえるでしょう。

 

重度知的障害の特徴

ひとりの少年

ここでは、知的障害の分類や重度・最重度知的障害の特徴、参考になるブログを紹介します。

 

知的障害は4段階、IQと日常生活能力水準で判断

知的障害は、知的機能の程度を示す「IQ(知能指数)」と適応機能の程度を示す「日常生活能力水準」に基づいて総合判定されます。

IQと日常生活能力水準はそれぞれ4つの区分があり、診断結果によって軽度・中度・重度・最重度の4段階に分けられます。

なお、生活能力はaが最も低く、dが最も高いです。

知的障害児(者)基礎調査:調査の結果

出典:知的障害児(者)基礎調査:調査の結果

  • IQ20以下(最重度レベル)で日常生活能力がd判定だった場合→「重度」
  • IQ51~70(軽度レベル)で日常生活能力がa判定だった場合→「中度」

 

重度・最重度の特徴

軽度知的障害の場合は基本的な生活はできるが言葉の発達が遅い、中度の場合は身辺のことは自分で部分的にできるがすべては困難、言葉の遅れがあるといった特徴があります。

重度、最重度の特徴は以下の通りです。

 

  • 重度

衣服の着脱や入浴、食事など生活支援が必要。
簡単な会話は可能だが、書いてある言葉や数、金銭について理解するのが難しく一人で行動するのは困難な場合が多い

 

  • 最重度

言葉を話すのは困難ですが、身振りや絵カードなどで意思疎通が可能なケースもあります。
身の回りのことはできず、生活全般の介助や見守りが必要です。

 

自閉症を併発している場合もある

知的障害は自閉症を併発している場合も少なくありません

自閉症は先天的な脳機能の障害によって起こる発達障害で、社会性やコミュニケーション、イマジネーションに偏りがあるのが特徴です。

以下のような行動があった場合、自閉症と診断される可能性があります

  • 目を合わせない
  • 同年代の子供たちと交流ができない
  • 一方的に話し続ける
  • 跳ねたり回ったりするのを繰り返す
  • 変化を嫌がる

 

重度障害者のブログ

重度障害者について知るには、日常生活の様子を紹介しているブログが参考になります。

ここでは、重度障害に関するブログを2つを紹介します。

 

「重度自閉症児iくんの記録★」

重度知的障害を伴う自閉症のお子さまの子育てブログです。

5歳頃から特別支援学校小学部4年生までのリアルな成長記録を読むことができます。

Amebaブログ/重度自閉症児iくんの記録★

 

「自閉っこそだて ~重度知的障害の息子との日々~」

重度知的障害を伴う自閉症のお子さまや家族との日常を読めるブログです。

おうち療育の様子や特別児童扶養手当の手続きについて書かれた記事もあります。

Amebaブログ/自閉っこそだて ~重度知的障害の息子との日々~

 

最重度知的障害・自閉症の子どもをもつ女性の奮闘

PRESIDENT Onlineの記事では、最重度知的障害・自閉症児の子育てと親の介護を同時に行う「ダブルケア」を経験する女性について紹介されています。

前半では、知的障害の兆候が現れたとき児童相談所で自閉症と告げられたときのことなどを読むことができます。

詳しくはこちら↓
【前半】
「100円ショップで買い物がしたい」知的障害の息子、鬱病の夫、脳梗塞の母をケアする女性の唯一の夢

【後半】
孤独と絶望の20年「重度障害児と老親ケア」で睡眠障害を患う46歳女性が、それでも笑顔になれる瞬間

 

大人の知的障害者が利用できる制度

知的障害のある大人の方をサポートするため、さまざまな制度が用意されています。

どのような制度を利用できるのがチェックしてみましょう。

 

療育手帳・知的障害者更生相談所

療育手帳は自治体によって交付される障害者手帳のことです。

知的障害の定義は“おおむね18歳未満の発達期に生じるもの”ですが、以前から障害があることはわかっていたが大人になって支援の必要性が出てきた、大人になって知的障害があることがわかったという場合、18歳以降でも交付を受けることが可能です。

療育手帳を取得することで知的障害の証明ができ、就労支援などを受けられます。

なお、法律による判定基準がないため、自治体ごとの判定基準で療育手帳は交付されます。

知的障害者更生相談所は、専門家に日常生活や医療、就労、手当などについて相談ができる機関です。療育手帳の判定や交付もここで実施しています。

 

障害者総合支援法のサービス

障害者総合支援法は、障害者の日常生活や社会生活の総合的な支援をするために制定されたものです。

18歳以上の知的障害のある方は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス(施設入所支援や自立訓練、共同生活援助など)を利用できます。

 

成年後見人制度

成年後見人制度は、家庭裁判所が選任した支援者が財産の管理や契約手続き、費用の支払いなどのサポートをしてくれる制度です。

判断能力が不十分である方が利用でき、本人の意思を尊重しながら必要な支援が提供されます。

 

障害者年金

障害者年金は障害や病気で日常生活や仕事が難しくなったとき、経済的支援を受けられるものです。

障害の状態で等級が決まり、等級によって支給額は異なります。

 

重度障害の場合は「特別障害者手当」

20歳以上で日常生活において常に特別な介護を必要とする重度障害の場合、特別障害者手当を受け取ることができます。

ただし、所得制限があり、本人や保護者の所得が一定額を超えると支給されません。

 

重度知的障害を対象とする施設

先生と女の子

ここでは、重度知的障害のある方を対象とする施設について紹介します。

 

独立行政法人国立重度知的障害者総合施設 のぞみの園

群馬県高崎市にある「のぞみの園」は、1971年に設立された重度知的障害のある方のための総合施設です。

地域移行や高齢知的障害者・発達障害児・矯正施設退所障害者などへの支援に重点を置いた事業を行っています。

 

入所施設もグループホームもある

のぞみの園には入所施設やグループホームがあり、入所者に対して夜間や休日における入浴・排せつ・食事の介護などの支援を行っています。

 

放課後等デイサービスもある

発達障害児支援として、小学生~高校生を対象とした放課後等デイサービスもあります。

学校終了後に、生活能力の向上のための訓練、社会交流の促進などを実施しています。

 

調査・研究も行っている

のぞみの園は知的障害者への支援などに関する調査・研究も行っています。

調査・研究の成果や取り組みなどは、年4回発行されるニュースレターで公表しています。

 

詳しくはこちら↓
独立行政法人国立重度知的障害者総合施設 のぞみの園

 

鷹取学園

福岡県直方市にある「鷹取学園」は、重度・最重度知的障害のある方への支援を行っている施設です。

作業能力のある入所者への生活介護支援(日中活動)や施設入所支援、医療ケアの支援などを実施しています。

詳しくはこちら↓
鷹取学園

 

生活介護事業所ITSUMO

千葉県千葉市にある「生活介護事業所ITSUMO」は、最重度の知的障害者を対象とした施設です。

最重度の知的障害がある人たちでもできる業務を探し、働けるように取り組んでいます。

生活介護事業のほか、児童発達支援、放課後等デイサービス、訪問介護などの事業も行っています。

詳しくはこちら↓
ITSUMO

 

知的障がいのある方をサポートしたい方は「わおん」

.障害者総合支援法のサービスのひとつに共同生活援助があります。これは地域にある住宅を利用した「障がい者グループホーム」で共同生活を送る障害のある方をサポートするサービスです。

「自立生活を送りたい」「自分たちがいなくなった後の我が子の生活が心配」という、障がいのある方、障がいのある方のご家族の方からのニーズが増えています。

全国各地に拠点を増やし続けている障がい者グループホーム「わおん」は、比較的軽度の知的障がい、精神障がい、発達障がいのある方を主にサポートしています。

昼間は雇用先で仕事をしている入居者の方も多いです。

「わおん」の特徴は「ペット共生型」という点。保護犬、保護猫が障がいのある方と一緒に生活を送っています。

わんちゃんやねこちゃんがいることで、利用者の方とコミュニケーションが取りやすいという「わおん」で働くスタッフの声もあるんですよ。

「わおん」では福祉の仕事は未経験という方も対象にした求人が多数あります。中には正社員の「管理者」の募集もあるので、やりがいのある仕事に挑戦したい方におすすめです。

無資格OKで時間の融通の利く「世話人」のパート求人もありますよ。

知的障がいのある方をサポートしたい動物好きの方は、一度、どのような求人があるのか見てみてくださいね。

 

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