動物と人との幸せな関係 ~「出来損ない」と言われて捨てられた犬がセラピードックとしてお年寄りを癒す。老人介護施設に「出勤」していたPちゃん~

そのほか

皆さんはアニマルセラピーをご存じですか?

 

セラピーには「治療」という意味があります。動物と触れ合うことで人が単なる「癒し」だけではなく、治療効果があるのですね。

アニマルセラピーは、大きく2つに分類されます。医師や臨床心理士といった医療従事者が治療のサポートとして動物を用いる動物介在療法(Animal Assisted Therapy, AAT)と、

動物とのふれあいを通じた生活の質の向上を目的とする動物介在活動(Animal Assisted Activity, AAA)です。

 

アニマルセラピーの歴史は長く、古くは古代ローマ時代までさかのぼります。負傷したローマ兵士の痛みを緩和し、心を癒したといいます。用いられる動物は、犬猫はもちろんのこと、馬やイルカ、野鳥なども用いられます。

 

そのため、障害者施設、老人介護施設、児童養護施設、刑務所や病院の緩和病棟など、ボランティアのセラピストが同行し、主に犬や猫が人々を癒しています。

 

家庭でペットを飼う事も、アニマルセラピーの一種です。

事実、ペットを飼っている人は飼っていない人より、年間20%前後病院に行く回数が減ったと言うデータがあります。

ドイツでは7500億円、オーストラリアでは3000億円もの医療費が、ペットの影響によって削減されています。

 

心臓疾患の患者さんに対する調査では、ペットを飼っている人は1年後に53人中3人死亡、飼っていない人は1年後に39人中11人死亡と言う、死亡率に大きな差が生じています。 一方、施設で長期に渡り生活をされている高齢者や障がいをお持ちの方は、犬などと触れ合う事により会話や笑顔が増え、表情の変化などの改善も見られるなど、 ペットによる効果が高く評価されているのです

(引用 NPO法人 日本アニマルセラピー協会https://animal-t.or.jp/html/about-animaltherapy/more-animaltherapy.html )

 

私はアニマルセラピーを知ったときに、人間は癒されるし、治療効果があるかもしれないけど、犬や猫はストレスが溜まらないの?と思ったことがあります。

 

だけど、ケアマネージャーをしている友人が飼っていたセラピードックPちゃんの話を聞いて、特に犬にとり、人間との触れ合いはいい効果をもたらすんだなと思いました。

 

(生きていた頃のPちゃん)

 

Pちゃんは友人が動物愛護センターから引き取った、お年寄りのトイプードルでした。元々は警察犬としての訓練を受けていましたが、

「出来損ない」と言われて、虐待され、心にも体にも傷を負って捨てられたPちゃんは、友人に引き取られ、セラピードックになりました。

 

友人が老人介護施設に通勤する際、Pちゃんも一緒に「通勤」していました。

通勤時間になると、Pちゃんは自分からかごに入り出勤の準備。

そして、施設に着くと、背中を差し出し、お年寄りに撫でてもらう準備をする。

それがPちゃんの仕事でした。

 

Pちゃんのお陰で、QOL(クオリティーオブライフ=生活の質)を向上させたお年寄りもいれば、認知症の進行が遅かった方もいたそうです。何よりもお年寄りが笑顔になったそうです。

 

Pちゃん自身も年齢とともに病を患い、出勤できる日が減りました。

友人が「Pはお留守番だよ」と言っても、Pは出勤の習慣をなかなかやめませんでした。

友人が看取る最後の最後まで、Pちゃんは、背中を差し出し、友人を癒そうとしました。

Pちゃんが亡くなったという話を聞いて、施設のお年寄りたちは自発的に千羽鶴を折り、お墓にそなえてくれるよう友人に頼んだそうです。

 

また私の息子は発達障害があり、小さい頃は感覚過敏が酷かったのですが、Pちゃんと数時間遊ぶと聴覚過敏が軽減し、リラックスして一緒に眠ることが多かったです。

 

警察犬としては「出来損ない」と言われたPちゃんでしたが、セラピードックとしては、たくさんの子どもやお年寄りを癒し、仕事に誇りをもっていたといいます。

 

私はこの話を聞いて、犬にとっても、仕事をすることや人と触れ合うことは、生きがいやりがいにつながるんだと思いました。

 

障害を持った方の多くが、社会や人間関係で否定され、傷つき、二次障害(本来の障害そのものではなく、傷ついたことにより、二次的に精神疾患・障害となること)を負います。

もちろん親や支援者は二次障害を予防しようとしますが、それでも二次障害を防ぎきることは難しい。

ですが、そういった方が、過去に負った心の傷が動物と触れ合うことで癒され、笑顔を取り戻すことも多いといいます。

 

 

また、動物と一緒に暮らすことで、世話をしなければいけないという責任感が産まれ、昼夜逆転の生活を送っていた方が、朝ごはんのために起きて、結果的に生活のリズムを取り戻すということもあります。

 

特に精神疾患・精神障害の方にとり、睡眠時間が一定している・質のよい睡眠をとれていることは、精神科医が回復の指標とすることも多いです。そういった意味でも、動物との暮らしは、規則正しい生活を送ることの手助けとなり、よい効果をもたらします。

 

傷ついた動物と人間が支え合って生きていく。動物にとっても人間にとっても幸せな関係ですね。あなたも動物と触れ合う時間を持ちませんか?