【福祉書評4】「天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ」

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今回は、「天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ」 (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2019/1/17 北野 唯我  (著) をご紹介する。

あなたは凡人?秀才?それとも天才?(僕は、朝7時には会社に来て、0時くらいまで仕事をするという質を量でカバーする凡人です。最初に言っときますww)

 

公開瞬く間に30万PVを超えた、大人気ブログ「凡人が、天才を殺すことがある理由。」を物語として書籍化したものだ。

 

【著者の北野唯我氏の経歴】

兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。就職氷河期に博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。その後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ワンキャリアに参画。執行役員として事業開発を経験し、現在同社の最高戦略責任者。レントヘッドの代表取締役。ヴォーカーズの執行役員も務める。

 

働いていて「悔しい」と思ったことは誰でもあるだろう。

「なんで、自分はあの人みたいに器用にできないのか」

「なぜ、言いたいことがうまく伝わらないのか」

「どうして人は理解してくれないのか」

 

上記のようなことを思うことは珍しいことではなく、仕事に真剣に向き合ったことがある人ならば、必ず思ったことがあるはずだ。

 

そして、「悔しい」という感情は、勘違いされがちですが、実は他人ではなく、自分へ向けられた気持ちだと思うのです。言い換えれば、「自分の才能を自分自身が活かしきれてないことへの焦りや悲しみ」です。

だからこそ、人は「もっとできるはずなのに…」と悔しくなるのではないでしょうか。

筆者が書く通り、私の場合も、悔しいと思うときは、自分に対する怒りだ。

 

本書では、自分の才能とはいったい何かという、「才能の正体」を理解し、その才能を「ビジネスの世界で必要な三つ」に定義し、活かし方を段階的に解き明かしている。

 

ビジネス書には珍しく、ストーリー形式で話が展開していく。主人公は天才女社長 上納アンナに憧れる広報社員 青野トオル。青野トオルを育成する犬のケン(天才 すべてを理解する者)。そして、秀才(スーパーエリート)の神咲秀一などの人物構成。

 

物語の中には「天才」と「秀才」と「凡人」の3人が便宜上登場するが、これは特定のだれかではなく、全て自分自身の中に共存するという前提だ。

 

そして、タイトルの「なぜ、凡人は天才を殺すことがあるか」という問いかけに対する謎が解けていく。

 

図:本書より

 

その「ビジネスの世界で必要な三つ」とは

  • 独創的な考えや着眼点を持ち、人々が思いつかないプロセスで物事を進められる人(天才)
  • 論理的に物事を考え、システムや数字、秩序を大事にし、堅実に物事を進められる人(秀才)
  • 感情やその場の空気を敏感に読み、相手の反応を予測しながら動ける人(凡人)

と本書では定義している。

 

 

図:本書より

 

天才、秀才、凡人の関係は上記の図のようになっている。天才は秀才に興味がないが、秀才は妬みと憧れの相反する感情を持っている。凡人は天才を理解できないから排除するが、天才は凡人に理解してもらわないと、ビジネスとして成り立たない。

 

天才は「創造性(世界を良くするという意味で、創造的か)」を軸に物事を評価し、秀才は「再現性(ロジック)」、凡人は「共感性(その人の考えが、共感できるか)」を軸にするので、3者は根本的に異なる。

 

本来であれば、この「軸」に優劣はないが、人数で考えると、凡人>>>>>>天才なので、数百倍の人数差がある。その気になれば、凡人は多数決により簡単に天才を殺せるのだ。

 

民衆がイエス・キリストを磔にしたのが例である。

 

大企業でイノベーションが起きないのは、この3つの「軸」を1つのKPIで測るからだ。

 

新規事業や革新的な事業は既存のKPIでは測れない。これは言い換えると、天才かどうかを測る指標が存在しないということだ。

 

‘’創造性は、‘’間接的‘’には観測することができる。

それが凡人の「反発の量」である‘’

 

反発の量(とその強さ)によって測るべきだが、大企業は「多くの凡人(一般大衆)によって支えられているビジネス」なので、反発をKPIにして事業を加速させることは、会社をつぶすリスクともなる。

では、どう天才を守ればいいか。

 

図:本書より

「軸」の違いによる3者間のコミュニケーションの断絶を防ぐために活躍するのが、3人の「アンバサダー」だ。「エリートスーパーマン」は「高い創造性」と「論理性」を兼ね備えているが共感性はない。「最強の実行者」は何をやってもうまくいく、ものすごく要領のいい人々。ロジックだけでなく人の気持ちも理解でき、結果的に人の気持ちを動かすことのできる、会社ではエースと呼ばれる。

「病める天才」は高い創造性を持ちつつ、共感性も高い。なので、爆発的なヒットを生む出すことができる。ただ、再現性がないので、ムラが激しい。結果的に、病んだり自殺したりすることも多い。

 

図:本書より

 

そして、凡人の中には、「あまりにも共感性が高く、誰が天才かを見極める人」がいる。それが「共感の神」だ。多くの天才は理解されないがゆえに死を選ぶが、「共感の神」に理解され支えられると、なんとかこの世にいることができる。共感の神は、人間関係の天才であるため、天才をサポートすることができる。大企業によくいる「根回しおじさん」のような存在だ。

天才は、共感の神によって支えられ、創作活動ができる。そして、天才が生み出したものは、エリートスーパーマンと秀才の高い再現性により、最高の実行者を通じて、人々に共感されていく。これが「世界が進化していくメカニズム」だ。

 

冒頭で、「天才」と「秀才」と「凡人」の3人が便宜上登場するが、これは特定のだれかではなく、全て自分自身の中に共存すると書いた。誰の中にも天才はいるのだが、幼少期からの同調圧力などで、自分の中の「秀才」や「凡人」が「天才」な部分を殺してしまう。そのストッパーが外れた人物が「天才」なので、誰しもが内なる天才を持っているのだ。

 

物語の中では、経営のフェーズが「再現性」に入った段階で、天才女性社長 上納アンナは秀才(スーパーエリート)の神咲秀一らの策略にはまり、会社を去ることとなる。上納アンナはその後、すぐに起業し、新会社は7年で上場するほどに成長した。そして、青野トオルは「共感の神」となり、他企業の人事兼広報としてその才能を発揮するという結末で終わっている。

 

会社経営者として、どの社員や役員がどの役割・どんな軸により動いているかを把握し、その能力を引き出すかは重要な課題だ。そして、事業のフェーズにより、それぞれの役割も変化していくこと。そのことを常に自身も意識し、経営していきたいと思った。