【福祉電評】「敏感くんたちの夏」|HSC(Highly Sensitive Child)人の気持ちが分かりすぎる繊細な生きづらさを抱えた子どもたち

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本日はETV特集(NHKオンデマンド)シーズン1、エピソード29「敏感くんたちの夏https://amzn.to/3wn3aCm)」をご紹介する。

 

皆さんはHSC(Highly Sensitive Child)やHSP(Highly Sensitive Person)という概念をご存じだろうか?

 

発達障害の感覚過敏とよく似た症状だが、障害や病気ではない。

 

人の悲しみや苦しみに深く共感し、自分のことのように受け止めてしまい自分も同じ気持ちになってしまう

 

という個性を持つ繊細な人たちのことだ。その敏感さが生きづらさにつながり、不登校やひきこもりとなるケースも多い。

 

HSC(Highly Sensitive Child)は1990年代半ばに心理学者のエレインアロンと夫のアーサーアロンによって造られた心理学用語だ。

 

発達障害の方も聴覚過敏・視覚過敏・触覚過敏など五感の過敏性を持っている場合が多い。だけど、HSC(Highly Sensitive Child)は脳の一部が刺激に「過敏」で体調を崩す。

 

発達障害の場合、「不全(健常に働かないこと)」で起きるという差があると言われている(「HSPと発達障害 空気が読めない人 空気を読みすぎる人」高田明和著 より)。

 

本作はそういった敏感な子どもたちが北海道の医師の下で、初めて当事者会に参加し、自分の繊細さを受け入れていくというドキュメントだ。

 

1人目の元気君(中1)は動物園のあざらし園が大好きだ。いつかは水中カメラマンになりたいという。

 

水中は「静かできれいでぼくの望んでいる世界みたい」だと語る。VTR中、赤ちゃんが泣きだすが元気君はその赤ちゃんのつらさを受け止めてしまい、つらくてその場を離れてしまった。

 

学校へ行くのがつらく、友達がケガして泣いてしまっても、自分の感情として受け取り悲しくなってしまう。

 

小さい頃から元気君の育児を手伝ってきた祖母のすみ子さんは、「敏感さを拒否したい気持ちでいっぱい」だと語る。昔でいう、物怖じする子・引っ込み思案な子との差が分からないし、理解ができない。私も同様の感想を抱きながら、VTRを観ていた。

 

祖母は元気君の生きづらさを理解するために、一緒に旅行に行くことを提案する。旅の途中、2人は自分のノートに感想をつける。それを休憩時間に交換して、お互いのノートを読み、理解を深める。

 

HSC(Highly Sensitive Child)の子どもは以下の4つの特徴を持つ。

 

  • 共感力が高い
  • 深く受け止める
  • 刺激を受けやすい
  • ささいな変化にも気づく

 

常にアンテナを張り巡らせているので、精神や神経を病みやすいという。海外の調査では、5人に1人がHSC(Highly Sensitive Child)との調査結果もある。

 

そして、高校生の当事者と精神科医を中心に、小学生と中学生で初めての当事者会を開催する。

 

初めて自分と同じ思いをしている仲間を見つけた」とほっとした元気君だ。

 

感動的な話だが、私はHSC(Highly Sensitive Child)やHSP(Highly Sensitive Person)に懐疑的な立場だ。

 

HSC(Highly Sensitive Child)/HSP(Highly Sensitive Person)ともに、精神医学上の概念ではなく、DSM にも指定はされておらず、医療機関でHSPという病名を付けられることはない。

 

上記したが、元気君がVTR中、赤ちゃんのつらさを受け止めてしまい、つらくてその場を離れてしまうというシーンがある。しかし、赤ちゃんは悲しくて泣くのだろうか?新生児の頃は眠い・お腹が空いた・おむつが濡れて気持ち悪い・あやして欲しい・不安などの気持ち全てを、泣くことで訴える。果たして元気君が感じ取ったのは、そのどの感情なのだろうかと疑問に思った。

 

まだ日本に入ってきてから新しい概念でもあり、最近では、その二次障害である「HSCうつ」などの精神疾患の治療に数十万円の請求をする医院も出てきている。

 

マスコミの報道も正しくなされていないことがあり、本作では、発達障害の感覚過敏との差を「共感性のあるなし」で分類しているように見える。

 

しかし、発達障害でも共感性が乏しく、人間関係に困難を抱える特性をもつのは、ASDの特徴であり、ADHDには当てはまらない。

 

①共感力が高い

②深く受け止める

③刺激を受けやすい

④ささいな変化にも気づく

 

の4つの特徴も、非常に主観的なものであり、エビデンスが存在しないからこそDSM にも指定されていないのだろう。発達障害診断を受け止めたくない親、ギフテッド信仰の親にとっての逃げ道的な概念となっていないか疑問に思った。

 

しかし、いづれにしても、見えない生きづらさを抱えていることに変わりはない。私たち福祉関係者は「疾患名」「障害名」にとらわれず、本人の「生きづらさ」を受け止めることが大切だと思う。

 

例え、病名や障害名がつかずとも、不登校になる要因は存在するのだから、その訴えを「気のせい」「考え方の問題」などと否定しない姿勢が必要となる。

 

そういった丁寧な支援をしていくという意味で、当事者会の様子など参考になる点も多いだろう。