世界の障害者を取り巻く現状
現在、全世界の障害者数は把握できているだけで、3億8,000万人以上います。今後も高齢化に伴う身体障害者の増加とともに、その数は増えていきます。また、我が国の障害者数は約990万人（対人口比率は8.25%）となっており、世界と同様に障害者数は増え続けることは確実です。約990万人の内、900万人は”軽度から中度”の障害者の方々で、重度の方々は約10%程度。大多数が軽中度の「障害」によって社会の中での生きづらさを感じています。
（引用：障害者の数 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/seikatsu_chousa_b_h28_01.pdf）
日本の障害者の対人口比率は8.25%。ヨーロッパ各国をみていくと、スウェーデンは20.5%、オランダは18.8%、ドイツは18.0%。日本はそれと比較するとまだ低い水準にあります。障害者という認定の基準を日本も年々引き下げていますが、この傾向は今後も続くでしょう。
特に、精神障害に関しては、平成11年時点で約204万人だったものが、平成26年には392万人と、増加し続けています。発達障害のある子どもたちの数も毎年増え続けている現状があります。
日本は全世界の中で飛び抜けて対人口当たりの精神病院の入院ベッド数が多く、入院期間はさらに飛び抜けて長い状況にあります。
（引用：厚生労働省 第８回 精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会参考資料 2頁
平成30年4月の診療報酬改定による早期退院政策とそれが招いたこと
イタリアでは、精神病院の入院ベッド数はほぼゼロです。ベルギーにおける平均入院期間は9.4日と、日本の269日と比較して圧倒的に短くなっています。そうした状況の中、精神病院病床の削減と早期退院という両軸で福祉政策が進んでいます。特に平成30年4月の診療報酬改定によって、早期退院政策がより一層加速しています。
現状でも1年間で40万人弱が精神病院から退院していますが、平成30年4月の改正によって、これまで以上に退院してくる方々が増えてきます。僕は、2020年度には年間約80万人以上が退院してくるのではないかと予測しています。
精神障害のある方々が病院から退院する際に、適切な退院先（実家・アパート等での一人暮らし・グループホーム入所など）がないままに退院してしまうケースが増えています。その結果「ネットカフェで生活する」精神障害のある方々は社会問題となっています。定職につかず、通院もせず、薬も飲まない精神障害者の方々は、症状が再発し入退院を繰り返してしまう傾向があります。
そういった方々の、病院退院後の受け皿としての「障害者グループホーム」の整備は不可欠です（病院勤務の精神科医の61%が、適切な退院先として、障害者グループホームを挙げています）。
発達障害のある方々が19歳を迎えると、これまで利用できていた「放課後等デイサービス」などが年齢制限により利用できなくなります。その結果、何が起こるか。実家にずっといるという状況になりがちで、家族の負担が非常に大きくなります。そのことが、虐待や家庭内暴力などを引き起こしもします。
こうした問題も「障害者グループホーム」に入所し、親離れ・子離れすることによって解決するケースも多々あります。グループホーム入所後に、一般企業への障害者雇用枠で就職することによって、自立した生活に目覚める方も非常に多いです。これまで「保護」の対象だった方々が、「社会の担い手」になれるようにすることも、「障害者グループホーム」の存在意義の一つでしょう。
4070・5080問題の解決のためにも、今後も障害者向けグループホームの需要は高まっていきます。
「藤田英明ライブ福祉スクール（https://anispi-seminar.peatix.com/）」より抜粋
文 田口ゆう
