「入院医療中心から地域生活中心へ」という国の政策と現実の福祉業界|精神障害者は「何をしでかすか分からない危険な存在」なのか?大切なのは心のバリアフリー

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(図:精神障害者の方の地域生活への移行支援に関する取り組み ~入院医療中心から地域生活中心へ~ 厚生労働省  https://www.mhlw.go.jp/seisaku/2009/07/03.html

 

精神障害の方たちへの福祉政策は、上図の三つにより成り立っています。

 

一つは国民の理解です。残念なことに、今でも精神障害の方に対する国民の差別意識は根強いです。障害者向けグループホームを建設しようとすると、周辺住民が反対することがあります。特におじいちゃん・おばあちゃんが反対しています。もともと、その場所が、老人ホームの建物だったとしても、障害者向けグループホームにしようとしたら反対するといったことも起こっています。

 

例えば、東京都の南青山に児童相談所を作ろうとしたら、大反対にあったという報道もありました。また、保育園をやろうとすると、子どもがうるさいからと、お年寄りが反対するということもあります。

 

まずは国民の理解ですし、心のバリアフリーが大切ですね。身体障害の方に対する差別は、だいぶ解消されてきています。知的障害の方に対しても、昔と比べたら差別意識が解消されてきているかなと思います。だけど、精神障害の方に対する差別意識は依然として、根強いものがあります。

 

知識がないがゆえに、「何をするか分からない」といった、マスコミの報道などで見聞きする情報だけが、全てのように思ってしまう方が多くいます。ですので、この「心のバリアフリー」というのは、すごく大事だと思います。

 

また、精神医療の改革も必須です。国が、早期退院をさせたいとしても、その受け皿がないとさせられません。あり余るほどの退院先があって、退院する人がきちんと、自己選択ができるという状況を作っていくことが、非常に大切だと僕は考えています。

 

市役所や区役所に許認可の申請に行くと、「グループホームはいっぱいあるんですよね」と、皆さん、言います。そういう意味では、昔から、福祉業界は変わっていません。僕が大学を出て、勤め始めた、1998年には、まだ介護保険制度がありませんでした。2000年に介護保険制度ができ、2003年の時点で、僕は高齢者向けデイサービスセンターの申請に行きました。その時に、市長さんに「もうデイサービスはいっぱいあるので」と言われたんです。

 

その当時には、全国に4,000ヶ所のサービスセンターがありました。それが、今、何カ所あるかというと、5万ヶ所あります。その当時、いっぱいあったのが、5万ヶ所できて、生存できている。市場原理が通用しないんですね。市区町村は、色々な財政的バイアスがかかっているので、できるだけ福祉施設は出させたくないんです。根本的な考えはそこにあるので、そこにめげずにやっていくしかないでしょう。

 

図の一番下で「入院医療中心から地域生活中心へ」という綺麗な言葉にまとめられています。精神障害の方を、病院に入院させておくという体制から、自宅だったりグループホームだったり、地域に出していきましょうという大きな枠組みは、国も示しています。ただ、この三つが、うまくかみ合わなければ意味がありません。

 

例えば、国民は差別しなくなり、差別意識はなくなったとします。そうなっても、病院の早期退院が進まなかったり、また、その受け皿がなかったりすれば、地域に出てくることはできません。ですので、この三つがうまくちゃんとリンクして進んでいくことが大切です。

 

昔から変わらない福祉業界ですが、僕は、改革していきたいと考えています。そのために、アニスピホールディングスでは、様々なメディアを通じて、精神福祉の現状を情報発信しています。賛同してくださるという方は、お気軽に声をかけてください。福祉の未来を一緒に変えていきましょう!

 

「藤田英明オンラインサロン(https://anispi-seminar.peatix.com/)」

文 田口ゆう