介護士の資格というと「介護福祉士」がよく知られていますが、他にもさまざまな種類があります。
職種や仕事内容によって必要な資格は異なるため、どんな資格が必要なのかチェックしておきましょう。
今回の記事では、主な介護資格の取得方法や平均給料、介護福祉士の資格取得の難易度などを詳しく紹介します。
主な介護士資格の種類と資格別平均給料、資格の取り方
主な介護士資格には、介護職員初任者研修・介護福祉士実務者研修・介護支援専門員(ケアマネージャー)・介護事務があります。
それぞれの資格別に、平均給料や資格の取り方を紹介します。
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修は、介護の基礎知識・技術を身に付けられる入門資格です。
受講条件は特になく、各都道府県が指定した養成機関で130時間の講座を受け、修了試験(筆記)に合格することで資格を取得できます。
【介護職員初任者研修修了者の平均給料】301,210円(月給)
※令和2年2月
※介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得(届出)している事業所における介護職員
(常勤)の平均給与額(基本給+手当+一時金)
出典:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」21ページ参照
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/20/dl/r02gaiyou.pdf
介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修は介護職員初任者研修の次にあたる上位資格で、介護の実践的な知識・技術を身につけられます。
受講条件は特になく、450時間の講座を受けることで資格を取得できます。
介護職員初任者研修を修了している場合は、受講時間が130時間免除されます。
【介護福祉士実務者研修修了者の平均給料】303,230円(月給)
※令和2年2月
※介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得(届出)している事業所における介護職員
(常勤)の平均給与額(基本給+手当+一時金)
出典:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」21ページ参照
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/20/dl/r02gaiyou.pdf
介護支援専門員(ケアマネージャー)
介護支援専門員(ケアマネージャー)は、相談業務・利用者に合わせたケアプランの作成・給付管理が主な仕事です。
介護支援専門員になるには、以下のいずれかの条件を満たして「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格する必要があります。
- 社会福祉士・介護福祉士・栄養士など特定の国家資格を保有し、資格に基づいた業務に通算5年以上かつ900日以上従事した人
- 生活相談員・相談支援員などとして相談支援業務(対人)に通算5年以上かつ900日以上従事した人
【介護支援専門員の平均給料】362,510円(月額)
※令和2年2月
※介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅱ)を取得(届出)している事業所における介護
職員(常勤)の平均給与額(基本給+手当+一時金)
出典:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」13ページ参照
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/20/dl/r02gaiyou.pdf
介護事務
介護事務は介護サービスを提供する事業所や施設で、介護報酬請求業務や窓口業務、管理業務などを行う職員のことです。
介護事務の資格は、さまざまな運営団体が発行しています。
【介護事務資格の一例】
- 介護事務管理士(JSMA技能認定振興協会)
- ケアクラーク(日本医療教育財団)
- 介護報酬請求事務技能検定(日本医療事務協会)
介護事務の資格は必須ではありませんが、取得すると業務に関わる知識を身につけているという証明になるでしょう。
【介護事務職員の平均給料】312,470円(月給)
※令和2年2月
※介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅱ)を取得(届出)している事業所における介護
職員(常勤)の平均給与額(基本給+手当+一時金)
出典:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」13ページ参照
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/20/dl/r02gaiyou.pdf
【介護福祉士】資格取得の条件
介護の資格のなかで、介護福祉士は唯一の国家資格です。
資格保有者の需要は高く、社会福祉法改正によって、2017年4月1日から資格を持っていて、在職中でない方は、都道府県福祉人材センターに届出をすることが努力義務となっています。
介護福祉士の仕事内容は幅広く、高齢者や障害のある方の身体介助や生活援助、相談業務のほか、現場の責任者としてスタッフの教育・指導も行います。
資格手当がつくなど優遇されることが多いため人気の資格です。
ここでは、介護福祉士試験の受験条件や難易度について紹介します。
年齢制限はある?
介護福祉士試験の受験資格に年齢制限はありません。
厚生労働省が発表している介護福祉士国家試験の年齢別合格者を見てみると、幅広い年代の人が試験に合格していることがわかります。
特に41~50歳の合格者が多いため、年齢に関係なく挑戦しやすい資格といえるでしょう。
【合格者の内訳・年齢別】
年齢 | 割合 |
~20歳 | 7.8% |
21歳~30歳 | 25.7% |
31歳~40歳 | 20.3% |
41歳~50歳 | 26.2% |
51歳~60歳 | 16.5% |
61歳~ | 3.5% |
出典:厚生労働省「第33回介護福祉士国家試験合格発表」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17324.html
中卒でも取れる?
介護福祉士試験の受験資格には、学歴制限もありません。
試験を受けるために必要な一定条件を満たせば、中卒でも介護福祉士を目指すことができます。
難易度は高い?
介護福祉士の試験は年1回行われ、筆記試験と実技試験に合格する必要があります。
厚生労働省によると、介護福祉士国家試験の合格率は以下の通りです。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
第29回(平成28年度) | 76,323人 | 55,031人 | 72.1% |
第30回(平成29年度) | 92,654人 | 65,574人 | 70.8% |
第31回(平成30年度) | 94,610人 | 69,736人 | 73.7% |
第32回(令和元年度) | 84,032人 | 58,745人 | 69.9% |
第33回(令和2年度) | 84,483人 | 59,975人 | 71.0% |
出典:厚生労働省「第33回介護福祉士国家試験合格発表」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17324.html
第28回以前11年間の受験者数は10万人以上、合格率が40%台~65%以下でしたが、第29回以降は約7割の人が合格しています。
受験対策をしっかりと行えば、取得しやすい国家資格といえるでしょう。
介護福祉士資格の取り方・費用例、実務経験の期間
介護福祉士の試験を受験して資格を取得するには、実務経験ルート・福祉系高校ルート・養成施設ルートがあります。
それぞれのルートごとに、資格取得までの流れ・費用例・実務経験の期間を紹介します。
実務経験+介護福祉士実務者研修
介護福祉士の受験資格を得る方法のひとつが、実務経験ルートです。
介護等の業務に3年以上かつ従事日数540日以上勤務し、実務者研修を修了した人が介護福祉士試験を受けられます。
パート・派遣など非正規雇用での勤務期間も実務経験に該当します。無資格・未経験者でも実務経験を積みながら国家資格の取得が目指せるため、実務経験ルートで介護福祉士を目指すケースが多いです。
【費用例】
- 実務者研修の受講料(無資格者の場合):10万〜20万円程度
- 介護福祉士試験受験手数料:15,300円
福祉系高校卒業
福祉系高校や福祉系特例高等学校を卒業することで、介護福祉士の受験資格の対象者となります。
特例高等学校の場合は、卒業後に9ヶ月以上の介護など実務経験が必要です。
また、受験時に筆記試験だけではなく、実技試験も受け、合格しなければならないケースもあります。
高卒以上の人は、このルートは当てはまりません。
【費用例】
- 高校卒業までの学費:200万円~400万円程度
- 介護福祉士試験受験手数料:15,300円
福祉系の専門学校などを卒業
福祉系の専門学校など介護福祉士養成施設を卒業すると、介護福祉士試験の受験資格を得られる養成施設ルートもあります。
介護福祉士養成施設に通う期間は、普通科の高校や一般の大学を卒業した場合は2年以上、福祉系大学・社会福祉士養成施設・保育士養成施設などを卒業した人は1年以上です。
最短1年で受験資格を得られるので、3つのルートのなかでもっとも早く資格取得が目指せます。
【費用例】
- 介護福祉士養成施設の学費:100万円~400万円
- 介護福祉士試験受験手数料:15,300円
ユーキャンなど通信教育で取れる?
ユーキャンなどの通信教育では、介護福祉士の受験対策講座を実施しています。
通信教育によって異なりますが、受講期間は約3ヶ月または約6ヶ月、受講内容はテキスト学習・web学習・模擬試験などがあります。
なお、通信教育は実務経験ルートの筆記試験対策向けです。受講しても実務者研修を修了したことにはならないので注意しましょう。
独学ではなくサポートを受けながら、集中して筆記試験対策をしたい人は利用するのもひとつの手です。
なお、介護福祉士試験を申し込む際は、まず「公益財団法人 社会福祉振興・試験センター」に「受験の手引き」を請求する必要があります。試験センターのホームページもしくは郵便はがきにて請求ができるので覚えておきましょう。
その他の介護士資格
介護士の仕事に活かせる資格は、他にもたくさんあります。
代表的な介護士資格を5つ紹介します。
喀痰吸引等研修
喀痰吸引等研修は、「たんの吸引」や「経管栄養」を行える介護士を養成する研修です。
喀痰吸引等研修を修了した介護士は、一定条件のもと施設や在宅で利用者に対するたんの吸引などが実施可能になります。
喀痰吸引等研修は基本研修(講義+演習)と実地研修を受講して、認定評価に合格すると資格を取得できます。
実務者研修を修了している人は、基本研修は免除になります。
詳しくはこちら↓
厚生労働省/喀痰吸引等研修
介護予防運動指導員
介護予防運動指導員は、高齢者が介護を受けずとも自立して健康に生活できるようサポートを行う職業です。
栄養指導や筋力向上トレーニングなど利用者に合った介護予防プログラムを作成し、実施・指導するのが主な仕事です。
介護予防運動指導員になるには、養成講習を受講して修了試験に合格する必要があります。
養成講習は、介護支援専門員や介護福祉士実務者研修修了者など特定の資格保有者が受講できます。
詳しくはこちら↓
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター/介護予防運動指導員養成事業について
福祉用具専門相談員
福祉用具専門相談員は利用者の身体状態などに合わせて、介護ベッド、車イスなどの福祉用具選定や使い方の指導を行うのが主な仕事です。
福祉用具専門相談員になるには研修機関で50時間の講習を受講し、修了評価試験に合格する必要があります。
詳しくはこちら↓
一般社団法人 全国福祉用具専門相談員協会
レクリエーション介護士
レクリエーション介護士は2014年に誕生した介護資格で、高齢者レクリエーションのスキルが身につけられます。
介護施設などで働く介護士が、高齢者の状態に合わせたレクリエーションを実施できるように資格を取得することが多いです。
レクリエーション介護士は1級・2級があり、通信または通学の講座を受講して試験に合格することで資格を取得できます。(2級は通信のみでも取得可)
2級は受講・受験資格は特にありませんが、1級は2級を取得した人のみ受けられます。
詳しくはこちら↓
【公式】レクリエーション介護士|日本アクティブコミュニティ協会
サービス提供責任者
サービス提供責任者は、訪問介護事業所で介護サービス提供の責任を担う人のことです。
訪問介護計画書の作成・利用者様や家族とのアセスメント・ヘルパーの指導や管理など業務内容は多岐にわたり、管理者との兼務を行うこともあります。
サービス提供責任者は役職名で、特に資格試験はありません。
しかし、サービス提供責任者の役職につけるのは、以下のいずれかの資格取得者のみです。
- 介護福祉士
- 介護福祉士実務者研修
- ホームヘルパー1級(旧資格)
- 介護職員基礎研修(旧資格)
ほか、取得すればソーシャルワーカーとして活躍できる「社会福祉主事任用資格」などもあります。
介護士資格を活かせる職場「わおん」
「わおん」は障害のある方と保護犬・保護猫が共に暮らす障害者グループホームです。
障害者グループホームは障害福祉サービスのひとつで、障害のある方が地域の住宅でスタッフのサポートを受けながら生活を送る場所です。
障害者グループホームには数人のスタッフが勤務していますが、その中でリーダー的な役割を果たすのがサービス管理責任者(サビ管)です。
サービス管理責任者の資格を取得するにはまず基礎研修を受ける必要があります。
研修を受けられるのは一定の実務経験を持つ人になりますが、介護福祉士や介護職員初任者研修の資格保有者なら無資格の場合よりも短期間の実務経験で研修の受講が可能です。
「わおん」はペットと一緒に暮らせる珍しいグループホームとして注目を集め、多くの事業者が全国各地でわおんを立ち上げています。
動物好きの方は就職や転職先に「わおん」を検討してみませんか?