障害者グループホームを開業するには?立ち上げに必要な手続きや資金、ノウハウなど

事業をはじめたい方コラム

コロナや、災害など、安定しないご時世が続くなか、安定した収入を求めている方は多いのではないだろうか?

障害福祉事業は、行政からの給付費で運営を行う、安定した事業である。厚生労働省の資料によると、2019年障害福祉事業所数は、148,726ヶ所。また、東京商工リサーチによると、障害福祉事業廃業企業数は、2019年で30件とされている。

全体の数は事業所の数、廃業数は企業数しか行政より発表がなされていないため、障害福祉事業のみの廃業率の算出はできないですが、経済産業省が出している産業別企業当たりの事業所数(付表2)を基に全業種の1企業当たりの平均事業所数を算出すると、約13.7事業所となる。これを基に、障害福祉事業所数から企業数を求めると、 148,726÷13.7=10,855企業となり、障害福事業を行う企業数は、約10,855企業であると予想される。

10,855企業中30企業が廃業となると、障害福祉事業の廃業率は、0.27%となり、他業種と比較してもかなり低い数値となることが分かる。

今回は、そんな安定した事業である障害福祉事業の中から、障害者グループホーム事業を開業するために必要な手続きや資金、ノウハウ等について、詳しく見ていきたい。

障害者グループホームとは

障害者グループホームとは、正式名称は共同生活援助と呼ばれ、知的・身体・精神に障害のある方が援助を受けながら共同生活を送れる障害福祉サービスのこと。

介護サービス包括型・日中サービス支援型・外部サービス利用型の3類型がある。

  • 介護サービス包括型…介護サービスを事業所が提供する。生活支援員を配置する。
  • 外部サービス利用型…介護サービスを受託居宅介護サービス事業者が提供する(事業所が契約)。
  • 日中サービス支援型…常時介護を要する者に対し、昼夜を通じて介護サービスを事業所が提供する。

共同生活援助は障害者グループホームのことで、障害福祉サービス(訓練等給付)のひとつ。施設には家事援助や日常生活での相談を受ける世話人、食事や入浴、トイレなどの介護支援を行う生活支援員などの職員がいて、日常生活上の援助や介護支援を受けながら共同生活を送れる。

指定申請までに必要な準備・資金・期間

  1. 準備:各関係機関への確認
    ・障害者総合支援法(市町村障害福祉担当課)
    ・消防法(消防署:火災報知設備、火災通報装置、スプリンクラー等の消防用設備の設置等)
    ・建築基準法(建築安全センター、市町村(同法所管課))
    ※検査済証(確認済証、建築台帳記載事項証明書、建築計画概要書等)
    ・都市計画法(市町村(同法所管課))
    ・バリアフリー法(市町村(同法所管課))
    ・農地法(農業委員会)
    ・給食施設等の届出(保健所)
    ・労働基準法(労働基準監督署)
  2. 資金
    障害福祉事業は、行政からの給付費で運営を行う、安定した事業ではあるが、給付費の受領にサービス提供からタイムラグが発生する点は、デメリットと言えるだろう。
    例えば、8/1に事業所を開所した場合、8月のサービス提供に関する給付費は、9/1~10の間に、国保連合会へシステムにて請求を上げ、そのお金が事業所の手元に振り込まれるのは、10月中旬以降となるのが、一般的だ。
    8月開設までの準備資金しか手元に無い状態で事業を始めてしまうと、8月開設以降の資金を、事業の売上で対応することは不可能となり、事業が存続できない。
    そのため、最低でも、3か月程度の運営資金(人件費、物件家賃、その他諸費用)に関しては、事業所の準備資金として運営前には確保しておく必要がある。
    例)2棟8居室定員の事業所を8/1に開設する場合
    ・家賃:各居室4万×8居室×3か月=96万円
    ・人件費:【正社員1名(月給25万)+夕・朝勤7h×30日(時給1000円)+夜勤7h×30日(時給1250円)+法定福利費16%(全員社保加入で試算)】×3か月=251万4300円
    ・旅費交通費:1万円×2棟×3か月=6万円
    ・事務用品:5000円×2棟×3か月=3万円
    ・水光熱費:6万円×2棟×3か月=36万円
    合計392万4300円
    ざっくり見ても、400万円近くの持ち出しを想定して、資金準備が必要となる。
  3. 準備期間
    後に、指定申請の流れを記載するが、4か月前から指定権者への確認準備がすすんでいくため、4か月以上前には、①の各関係機関への相談・確認が必要となる。
    そのため、指定を8月1日に取得したいと考えると、
    2月中:事業を行う物件の確保→3月中:①の各関係機関への確認を進める→4月から、指定申請の流れに沿って、指定申請書類の提出を進める→8/1より、事業所開設し、運営開始

指定申請に必要な書類(東京都一覧参照)

指定申請書
指定に係る記載事項
介護給付費等算定に係る体制等に関する届出書
介護給付費等算定の算定に係る体制等状況一覧表(ユニットごと)
福祉専門職員配置等加算に関する届出書及び各種資格証明書の写し又は実務経験証明書
共同生活援助に係る体制
夜間支援等体制加算届出書
通勤者生活支援加算に係る体制
医療連携体制加算(Ⅶ)に関する届出書及び看護師の資格証明書の写し及び重度化した場合における対応に関する指針
重度障害者支援加算に係る届出書
視覚・聴覚言語障害者支援体制加算届出書
地域生活移行個別支援特別加算に係る体制
看護職員配置加算に関する届出書
精神障害者地域移行特別加算に関する届出書及び各種資格証明書
強度行動障害者地域移行特別加算に係る届出書及び各種修了証
夜勤職員加配加算に関する届出書
医療的ケア対応支援加算に関する届出書
強度行動障害者体験利用加算に係る届出書
申請者の定款、寄付行為等及び登記事項証明書又は条例等
建物の構造概要及び平面図並びに設備の概要
登記(全部)事項証明書など所有権が確認できる書類(自己所有物件を使用する場合)
賃貸借契約書(写)(賃借物件を使用する場合のみ)
受託居宅介護委託契約書の写し(外部サービス利用型事業所のみ)
事業所の管理者、サービス管理責任者の雇用契約書及び経歴書
サービス管理責任者研修及び相談支援従事者研修修了証
実務経験証明書及び資格証明書の写し(資格を持っている場合のみ)
事業所の世話人、生活支援員の雇用又は委託(請負)契約書及び経歴書
勤務体制表(職員配置状況確認調査表)
運営規程
利用者からの苦情を解決するために講ずる措置の概要
主たる対象者を特定する理由書
協力医療機関リスト、当該協力医療機関との契約の内容がわかる協定書等
36条第3項各号非該当誓約書及び役員等名簿
当該申請事業に係る資産状況(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、財産目録等)
就業規則
協議会等への報告・協議会からの評価等に関する措置の概要
事業開始届、事業計画書、収支予算書
耐震化に関する調査票
関係機関相談状況確認書、各関係機関との個別相談議事録
東京都障害者通過型グループホーム指定申請書及び添付書類(通過型の助成を受ける場合)
社会保険及び労働保険への加入状況にかかる確認票
メールアドレス登録

指定申請の流れ

  1. ①事前準備(説明会の出席が義務とされる指定権者もあり。例)埼玉県、東京都、等)
    目安:指定希望日の4か月以上前
  2. 指定権者の障害福祉課へ、訪問日程予約
    目安:指定希望日の4か月前
  3. 指定権者への相談
    目安:指定希望日の4か月前
  4. 指定申請書類の持ち込み・打合せ
    目安:指定希望日の3か月前
  5. 指定申請書類の提出・収受
    目安:指定希望日の2か月前
  6. 書類審査・現地確認
    目安:指定希望日の1か月前~
  7. 指定が下りる

ノウハウを得るためには?

  1. 行政の説明会に参加
    行政によっては、定期的に障害福祉事業の説明会を開催している場合があるので、開催されている地域の場合は、必ず参加することをお勧めする。ただし、そこでは大まかな流れや仕組みを説明することがほとんどのため、障害福祉事業運営のノウハウを得るためには、自身で、厚生労働省や指定権者が出している事業運営に必要な資料を読み込んだり、事業説明動画などを視聴したりする必要があるだろう。
    また、各市区町村や指定権者によって、細かな独自ルールを設定している場合がある。そういった細かい内容も自身で、都度、行政に確認していく必要がある。
    新たな事業を行う場合、何が分からないのか、分からない、という状態に陥ることも少なくないだろう。障害福祉事業に関しては、法律に則って運営する事業となるので、分からない状態で開設することは不可能となる。その分、事前準備にかなり時間と労力を要することが予想される。
  2. 実際に運営されている障害者グループホームへの入職
    障害福祉事業を運営するにあたって、事前に他の障害者グループホームに入職して、知識を得ることも、1つの手段である。
    ただし、未経験から入職すると、運営に関する職務を任されるより先に、現場での経験を積むことを求められる場合が多いため、実際の運営にかかわる立場になるまでには、年数が必要となるだろう。
  3. フランチャイズへの加盟
    障害福祉事業のフランチャイズが多数存在することはご存じだろうか。
    知識やノウハウをフランチャイズに加盟することで手に入れることは、開設までの一番の近道となるだろう。
    ただし、フランチャイズに加盟することですべてをコンサル任せにしてしまうと、運営する企業オーナーや運営責任者自身が障害福祉事業に関する知識を有さない場合がある。そうなると、指定権者からは、不信感を示される場合もあるので注意したい。
    フランチャイズに加盟した場合でも、運営事業者が障害福祉事業に関する知識を有する必要がある。その知識を得る手段として、フランチャイズへ加盟することは、いかがだろうか。

【FC例】

参照:フランチャイズWEBリポート