(右図:厚生労働省 09_参考資料_障害福祉分野の最近の動向_0120
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000591643.pdf)
国の負担と自治体負担の違い
障害福祉事業に参入しようという方は必ず今回の市場(マーケット)について理解しておいてください。
「フランチャイズに加盟するから大丈夫」「コンサルタントが開業支援してくれるから大丈夫」「行政書士の開業サポートで新規参入するから大丈夫」「介護事業をフランチャイズでやってるから大丈夫」
そう言った「大丈夫」という声を多く聞きますが、障害福祉事業を経営するのはご自分なのでご自分でしっかり市場特性について理解して障害福祉業界に参入しましょう。
で、この図の右側が、障害福祉サービスの予算で、左側が医療の予算です。医療全体でいうと、現在、予算は40兆円です。障害福祉の予算は、現在、2.6兆円くらいです。
グラフを見ると、右側に「国庫」と「地方自治体」という内訳があります。そこに、国が25.7%で自治体が13.2%と書いてあります。
国の負担率の方が高く、自治体負担率の方が低くなっています。
障害福祉予算はどうかというと、国の負担が50%、自治体負担が50%です。右側のグラフは国の予算を示しています。この中に、自治体負担額は含まれていないので、この約2倍の額が、総給付費です。おおよそ2兆6000億~7000億ぐらいが給付の総額です。平成19年度を見ると、総額は、まだ5,300億円くらいです。2倍にしたとしても、1兆円です。
※「統計で見る障害福祉事業マーケットの拡大|増え続ける障害者の数!国はなぜ精神病院からの早期退院にかじを切ったのか?」https://anispi.co.jp/president_blog/post-4249/
しかし、令和2年度を見ると、3兆円に迫っています。平成19年から、約10年ちょっとで、給付額が3倍になっています。給付額というのは、事業で考えると、それが障害福祉マーケットということです。10数年で、マーケットが3倍になるという業界はなかなかありません。
この業界だけを見ていると、利用者の数が増えたので、当たり前と単純に考えがちです。ですが、他の産業と比べると、これだけ急増しているところは他にはないです。
障害福祉サービス別給付額の内訳
(図 05_資料5_障害福祉サービス等の利用状況_ver4 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000693788.pdf)
このグラフは、障害福祉予算の給付額である2兆7000億円の内訳です。割合が一番大きいのは、生活介護(障害者デイサービス)で、全体の約30%を占めています。
次が、障害者の就労継続支援B型で、14%を占めています。その次が、放課後等デイサービス(障害児の学童保育)いわゆる放デイです。その次が、施設入所支援で、7.1%になっています。その次がやっと障害者グループホーム(共同生活援助)なので、給付額に占める割合でいうと、介護包括型のグループホームは非常に低いです。
生活介護(障害者デイサービスセンター)の給付に占める割合が、非常に高い理由はいくつかあります。一つは、障害者デイサービスは、利用する頻度がとても高いからです。だいたい、皆さん、週5日ぐらい通います。また、サービス単価が高いことも挙げられます。1回利用すると、1万円くらいになります。利用回数が多く、単価が高いので、給付額が大きいのです。
逆に、放課後等デイサービスは、単価はそれほど高くないですが、事業所の数が非常に増えているので、割合が高くなっています。就労継続支援B型も同様で、単価はそれほど高くないのですが、事業所の数が増えているので、占める割合が高いのです。
グループホームは、入所型なので、どちらかというと、単価はそんなに高くないですが、暮らしているので、毎日、給付費がかかります。そして、事業所の数はそんなに多くありません。それなので、これぐらいの比率になっています。ただ、今後、グループホームの数は、恐らくどんどん増えてくると思います。なので、割合は上がってくると予想されます。
比率が上がると湧き起こる財務省による値下げの議論
割合が上がってくるとどうなるか。財務省内で、グループホーム事業にかかる支出が多いという議論が持ち上がります。
けど、割合が上がってきたところで、いじめていいところと、いじめてはいけないところがあります。放課後等デイサービスなどは、作り始めの頃は、利益率が非常に高かったです。高齢者のデイサービスも、介護保険ができた時の利益率は、とても高かったのです。
僕が高齢者のデイサービスを起業したときは、営業利益率が55%くらいでした。それは、高すぎるので、削ってもいいですよね。営業利益率50%が20%になっても、経営していけるからです。放課後等デイサービスも、学校に通っている間は、夕方に来て、夜にはお子さんを家に帰すので、非常に短時間です。そこは多分、削っても大丈夫なところです。だけど、夏休みや冬休みなど、丸1日いるときは、報酬を高く設定するようなフレキシブルな形にすれば、放課後等デイサービスの全体としての給付額は下がります。それは、問題ないと思います。
ですが、例えば、グループホーム事業への給付を減らしたらどうなるか。事業者が撤退してしまいます。
入所施設の事業者が撤退したときが一番まずくて、入居者の方たちの行き場がなくなってしまいます。行き場がなくなると、今まで就職できていた人たちが、働けなくなってしまいます。その結果、生活保護費は増え、逆にコストが増えます。
ですので、コストダウンしていいところと、ダメなところがあります。コストダウンすると、その波及効果で悪影響が起こるかどうかを、峻別しなければなりません。
文 田口ゆう